「ごっ、合コンなど破廉恥な!!行ってはならん!!」
すごい剣幕で幸村が叫ぶので、びっくりして携帯を床に落としてしまった。
フローリングの床にカシャンと音がする。
が、彼の叫びのほうがあまりにも衝撃的で、携帯を拾うより先にそちらへ視線をやると、
幸村は顔を真っ赤にしてこっちを見ていた。
「断れずに押し切られたのであれば、俺が幹事の方に話をつけよう!連絡先を教えてくれ!」
「まっ、待って幸村!!」
完全に頭に血が昇ってしまっている幸村を必死で制止する。
『人数あわせのために合コンに呼ばれたから土曜日の夜行ってくるね』と言っただけなのに、
幸村にはその言葉が『土曜日に浮気してくるわ!』ぐらいの意味合いにとれているみたいだ。
でも私は本当に人数あわせのために呼ばれただけだ。
だいたい集まる女の子は皆私よりもずっと可愛い子たちばっかりだから、
幸村が心配しているらしきことなんかどう考えても起こりっこない。
「すぐに帰るつもりだから、破廉恥なことになんてなり得ないよ。大丈夫大丈夫!」
「女子との出会いを求めて男子がやってくるのだぞ!何が大丈夫なものか!」
「幸村、私を信用してないの?」
「している!だが、にその気がなくとも、不埒な輩はどこにでもいるものだ!」
もう、絶句。
我が彼氏ながら謎過ぎる。
私にそこまでの魅力があると本当に幸村は思ってるんだろうか。
そもそも幸村がこんな私のどこを好きでいてくれてるのかも謎なのに。
「わ、分かった。断る、断るよ!そのかわり私のお願いきいてくれる?」
「・・・・・内容にもよるが、できる限り善処しよう。」
幸村は床に転がったままだった私の携帯を拾い上げて手渡してくれた。
これは・・・暗に今すぐ幹事に連絡しろっていうことなのかな・・・。
でも幸村には、このお願いごとにはきっと応えられない。


「私のどこが好きか、10個挙げてみて。」


あ、幸村、かたまった。
しかもさっきは興奮して赤くなっていたのが、今度は違う理由で真っ赤になってる。
のどこが・・・すっ、すっ、好き・・・か・・・?」
「うん。10個。」
まあどうせそんな恥ずかしいこと、照れ屋の幸村には無理でしょ。
だからせいぜい真っ赤になって口元押えて目を泳がせてる、この幸村の反応を楽しんでやろう。
そんでもって合コンにも行っちゃうもんね。
幹事の友達、必死だったんだもの。
「そのような・・・いや、しかし・・・、だが、ここで止めねば合コンに・・・!」
「無理しなくていいよ。」
――わ、分かった!明日提出しよう!」
「はっ?」
再びびっくりしてぽかんとする私を、幸村は真っ赤になりつつも真っ直ぐ見た。
彼の照れが感染してきたのか何故か私の体温もじんわりと上がりはじめた。
「すぐに言葉にするのは難しいゆえ、紙に書いてくる!
 一項目につき三十字以内でいいだろうか!?」
「か、紙に・・・?」
もしかしてレポート用紙にでも書いてくるつもりなんだろうか。
無理だ、そんなの恥ずかしすぎる。
想像するだけで恥ずかしすぎて変な汗が出てきた。
なのに幸村はあくまでも真剣で・・・。
「これから実家に戻って半紙と習字道具を取ってきて、一晩かけて書き上げる・・・!」
「やっ、やめて―――っ!!!」


・・・合コン行くの、やめました。











!きちんと書いてきたぞ!」
「合コン行かないって約束したのになんで書いてくるのよー!!」