pray
「……マルスって、王子様、なんだよな」
「……え?」
自分より少し低い位置の、マルスを見下ろして、
リンクは何気なく、呟いた。
あまりにも唐突、と言えば唐突な言い分で、
どう返事をしようか、マルスは少し困った顔で微笑んで、
リンクを見上げる。
「そう、……だけど」
「……ふぅん。やっぱり、そうなのか」
「……そう、だよ?」
まじまじとマルスを見つめるリンク。
……なんだか、いつものリンクと違って、変な感じだ。
落ち着かない。
「……じゃあ、さ」
リンクは、マルスの肩にふ、と触れると、微笑んだ。
上目づかいで見るマルスに、ちょっとそこに立ってて、と言う。
「……?」
「大したことじゃ、ないんだけどな」
リンクに言われたとおり、その場に立つマルス。
「……本当に、」
マルスの左手を、右手で包む込むように取る。
ガラスの細工物を扱うように。
空気が、静かになる。
手をそっと引いて、マルスの前に、片膝をつく。
ちょうど、騎士が、誓いを立てる格好で。
「……え……、」
「……永遠の、至高の愛の証を、」
揃った指先、手の甲に、
そっと、唇を落とす。
「……オレの、たった一人の、王子に」
「……」
瞬間。
「……ぇっ……!!」
マルスの顔が、見てわかるくらい、赤くなる。
手はまだ、リンクに握られたままで、
上手く動かせなかった。……何だか、手が、熱い。
何か言わなければいけないことがある気がするのに、
言葉は声にならずに、喉に引っ掛かる。
おろおろと、視線はリンクにじっと向けたまま、
どうすればいいのかと考えているところに、
「……あ、のなっ……」
リンクの、切羽詰まったような声が、聞こえた。
「……そんな……、……赤くなんなくても、いいだろ……」
「……だ、……って」
片膝をついたままのリンクが、微妙な顔つきでマルスを見上げていた。
マルスに負けず劣らずの、
何だかえらく、真っ赤な顔で。
すっ、と立ち上がる。
居心地悪そうに、前髪をぐしゃぐしゃと掻いた。
「……こん、なっ」
「……お前が、王子だって言うから、その、
……こうすれば、……いいのかなって……」
誓うには。
何を、とは、言わないけど。
「……リンク、」
「……たまには、こういうのも、いいかなって、」
「……」
「……それだけだ……、」
ふわり、と、腕を伸ばす。
マルスのそれより、ずっと大きな手で、頭を抱え込んだ。
肩に、そっと押さえ込む。
お互いの表情が、見えないように。
「……」
「……」
何だか、変だ。
不思議で。
こんなふうに、一緒にいて、誓うって、何を。
理由は、たった一つ、好きだから、だけど。
胸の奥で、心臓が、うるさいくらいに鳴っている。
相手に聞こえないか、怖かった。
「……あ、の、リンク」
「……何だよ」
「……あり、がとう」
「……。」
約束、してくれて。
小さな声で、呟いた、言葉が消えた。
昼の三時過ぎ、太陽が少しまぶしい部屋にて。
短いです。とっても経済的です。(何が……)
手の甲にキス。一度やらせたかった……ていうかやってさしあげたかったのです。
王子に。
なんとなく、ロイよりリンクの方がいいと思って、
こんな感じになりました。さくっと書いたので説明が足りない気がしますが……。
読んでいただいた方、ありがとうございました。