○ リトルガーデン ○
「……ええぇーっ、何で〜?」
「ごめん……、あの、本当に、ごめんな」
小さな身体で思いきり不満を訴えたカービィに、マルスは心底申し訳無さそうに謝った。
それは、心の底から、本当に、ごめんなさい、という気持ちが溢れていたのだが、
残念ながらカービィに、それは通用しなかった。
懸命に手足をばたばたさせながら、カービィは更に言い募る。
「せっかく、ボクと散歩行くって約束だったのにぃ」
「……うん……わかってる、んだけど……」
「わかってるなら、行こうよぉ」
「……で、でも……。」
「うーるーせー、そこのピンク玉。マルスの意見を尊重しろ」
しゅん、と表情を曇らせるマルスの後ろから、いつもの声がフォローに入った。
フォローと言うか、何と言うか。
マルスのことになると、何千倍もうるさいその声は、
今は、微妙に擦れていた。
マルスの膝の上に飛び乗って、カービィは、
マルスの後ろ ベッドに寝転がっているロイに、べぇっ、と舌を出す。
「なんだよぉ、ロイのばかー! 何でマルスに看病頼むのぉ〜」
「何だよ、そんなん、マルスが俺の愛しいハニーだからに決まっ 」
「っ、黙れ、バカ!!」
ごすっ。
……マルスの肘が、鮮やかに、ロイの頭に命中した。
「……ふふふ、いいさいいさ、これも愛のかたちだもんな……。」
しばらく経ってから、ロイがよろよろ復活してきたが、
そのセリフにあまり説得力は無い。
まあ、そんなことはともあれ。
「そーだ、そんなことはとにかく、だ、カービィ!」
「指差さないでよロイのいじめっこー!」
「俺が熱を出した以上、マルスは俺の看病をしなければならない。
だからお前との約束は延期だ! わかったら出てけ!」
「やーだー! ロイなんか、ほっといても死なないもん〜」
「何勝手なこと言ってんだ、おい!!」
「……ロイも、十分、勝手なこと言ってると思うけど……」
「なっ、マルス! 今日はマルス、俺の傍にいてくれるんだもんな!?」
珍しいマルスのささやかなつっこみは、無かったことにされてしまった。
はあ、と諦めたように溜息をついて、
マルスはカービィに微笑む。やっぱり、申し訳無さそうに。
「……と、いうことなんだ。……だから、ごめん」
「ほら! やっぱりな!!」
「ええ〜、ボクよりロイの方が大事なのぉ? ……むー……。」
およそ使い方を間違っているセリフをひょいひょいと吐いたカービィは、
床からマルスをしかめっ面で見上げた。
何を言おうか迷っているマルスは、苦笑したまま言葉を探しているが、
ロイは、カービィ曰くカービィよりロイを選んだマルス、にすっかり満足したらしく、
かなり上機嫌でにこにことマルスを見ている。
時折少し咳き込んで、そのたびにマルスの心配を買いながら。
そんな二人をじいぃっ、と見ながら、カービィは。
「……それじゃあ、ボクもここにいようかなぁ〜」
「………………は?」
さらり、と、こんなことを口走った。
「……なっ、おっ、ちょ、待てこら!!」
「やだ〜、もう決めちゃったもん〜。ねーマルス、膝の上載せて〜」
「え? ……あ、うん、いいよ」
「わーい」
反射的に声を上げたロイのことはきっぱりと無視して、
カービィはマルスの膝の上に、ちょこん、と飛び乗る。
当然そんな行動に対して、ロイが黙っているわけもなく、
半ば乗り出すようなかたちで、ロイはカービィに食ってかかった。
「てっめええぇぇぇ! 何羨ましいことしてんだこらーっ!!」
「ロイ、あんまり騒ぐな……。熱が上がるだろ」
「何だよっ、折角マルスと二人っきりだったのにーっ」
「知らないよぉー。先にマルスをとっちゃったのはロイでしょぉ〜?」
べー、と子供そのものの顔で舌を出して。
どこまでもロイに喧嘩を売る、カービィは。
「……ボクだって、マルスといっしょにいたいんだもんっ!」
マルスには聞こえない、だけどロイにはしっかり聞かせるような声で、
きっぱりと、そう告げた。
きちんとした意味でのカービィ×マルスにしてみま……した。
と言いますか、片想い?
カービィを腹黒い子だとは思ってはないんですが(それは子リンクのカテゴリ)、
子供のわがまま、とかいうと、こんな感じになります。
何か、カービィ+マルスって、よく見る組み合わせですね。……何でかな。