・ ・ ・ ・ ・ ・
要するに、いつも俺を捩じ伏せるあの剣の冴えは、実践の賜物である、ということだったのだろう。
あのいけ好かない蒼髪の山賊と同じく、この人は、けっして運動神経が抜群に優れているわけではない。
その証拠に、普段やらないことをやらせてみれば、この人はこんなふうに慌てる。
一生懸命、が小さな子どもと同じくらいわかりやすくて、なんだかとても新鮮だ。
あんまり珍しくてにやにやしていたら、あの藍色の瞳で、鋭く睨まれた。僅かに頬が赤い。
ああこれは、もしかしたら何か誤解しているかもと思ったら。

どうせ僕は、アイクみたいに腕力は無いし。
どうせ僕は、リンクみたいに器用ではないし。
どうせ僕は、おまえみたいに機転が利くわけでもないし。

なんて。
こんなことを、言い出した。

ああ、違う。俺が思っていたことは、俺が言いたいのは、べつにそんなことじゃない。
確かに腕力は無いし、確かに不器用だし、確かに行き当たりばったりに向いていない。
だけど、べつに、そんなことじゃない。
この人のいいところ、好きなところなんか、俺はいくらだって知っている。

自分に、何が足りないのかを知っている。
だけどそこで諦めるんじゃなくて。
誰よりも真面目に、誰よりも必死に、足りないものを補おうとするから。
そんなひたむきなところが、好きなんだ。

そう言って笑ってみたら、その人は、冗談を言う暇があるならもう一戦、と言い出した。
ああほら、やっぱり。
あらゆる言い訳をしてみせながら、何度だって練習を、勝負を繰り返す。
今回のこれは、なんてことはない、ただの遊びのひとつ、なのだけれど。

今度は負けないと、その人は言う。
悪いけど手は抜かないと、俺が答える。

相変わらず俺の気持ちも心も、まったく正しく伝わらない。
だけど、
それならそれなりに、なにか、これからも。
いいことがあるといいな、と思う。

青く澄んだ空の下、俺の足元に、小さな羽根のついたボールのようなものが落ちる。
あ、と呟いて顔を上げると、
そこには、一瞬だけぱあっと笑った後、俺の視線に気づいて慌てて隠そうとする、
青い髪の、綺麗な、恋人がいた。

(2009.01.01)

 

<SmaBro's text> <INDEX>