要するに、いつも俺を捩じ伏せるあの剣の冴えは、実践の賜物である、ということだったのだろう。 あのいけ好かない蒼髪の山賊と同じく、この人は、けっして運動神経が抜群に優れているわけではない。 その証拠に、普段やらないことをやらせてみれば、この人はこんなふうに慌てる。 一生懸命、が小さな子どもと同じくらいわかりやすくて、なんだかとても新鮮だ。 あんまり珍しくてにやにやしていたら、あの藍色の瞳で、鋭く睨まれた。僅かに頬が赤い。 ああこれは、もしかしたら何か誤解しているかもと思ったら。 どうせ僕は、アイクみたいに腕力は無いし。 どうせ僕は、リンクみたいに器用ではないし。 どうせ僕は、おまえみたいに機転が利くわけでもないし。 なんて。 こんなことを、言い出した。 ああ、違う。俺が思っていたことは、俺が言いたいのは、べつにそんなことじゃない。 確かに腕力は無いし、確かに不器用だし、確かに行き当たりばったりに向いていない。 だけど、べつに、そんなことじゃない。 この人のいいところ、好きなところなんか、俺はいくらだって知っている。 自分に、何が足りないのかを知っている。 だけどそこで諦めるんじゃなくて。 誰よりも真面目に、誰よりも必死に、足りないものを補おうとするから。 そんなひたむきなところが、好きなんだ。 そう言って笑ってみたら、その人は、冗談を言う暇があるならもう一戦、と言い出した。 ああほら、やっぱり。 あらゆる言い訳をしてみせながら、何度だって練習を、勝負を繰り返す。 今回のこれは、なんてことはない、ただの遊びのひとつ、なのだけれど。 今度は負けないと、その人は言う。 悪いけど手は抜かないと、俺が答える。 相変わらず俺の気持ちも心も、まったく正しく伝わらない。 だけど、 それならそれなりに、なにか、これからも。 いいことがあるといいな、と思う。 青く澄んだ空の下、俺の足元に、小さな羽根のついたボールのようなものが落ちる。 あ、と呟いて顔を上げると、 そこには、一瞬だけぱあっと笑った後、俺の視線に気づいて慌てて隠そうとする、 青い髪の、綺麗な、恋人がいた。 |