背中の事情


薄闇に、甘い甘い、蕩けるような声が上がる。

「や、んんっ」
「王子、かわいい」
「あ、ダメッ……や、カイルッ」
「ダメじゃなくて、そーゆーときは、もっと、ってかわいらしく言うんですよ。ね」
「ひゃんっ」

寝台の上、うつ伏せに横たわった上に覆いかぶさる金髪の男は、そんなことをいいながらアルジャンの背中、肩甲骨の辺りを軽く吸い上げる。その辺りが弱いのを、良く知っているからだ。

幼さを残す身体は、面白いくらいに大きく跳ねる。浮いた前面に手を差し入れ、先ほどまでたっぷりと舐めしゃぶり、指先で捏ねて赤く尖らせた突起に触れてやると、強請るように細い腰が猥らに揺れた。

「ほーんと、王子って背中弱いですよね。ほら、こっちももう」
「あ、あああっ」

背後から胸元を弄るのとは逆の手が、一度達した後にすぐ力を取り戻した中心に触れる。その間も唇は、背中を愛撫し続けている。背骨に添って舐めて、あちこちに唇が触れ、時折強く吸われる。ひくひくと震える身体は、強い快楽の海に漂っていることをカイルに教えてくれていた。

「今日は後ろからしましょうか。……ああ、もうとろとろですねー」
「やぁっ、……言う、なっ」
「ほら、簡単に俺の指を咥えて」
「ん……んっ」

中に侵入してきた指先が、いやらしい音を立てながら中をたっぷりかき回して行く。シーツにしがみ付いたアルジャンは、ただその与えられる強烈な快感に翻弄されるばかり。うわごとのように覆いかぶさる男の名前を呼び、腰だけを高く掲げた猥らな体勢で、自分を満たしてくれる熱を待っている。

「も……やぁっ……カイル、カイルッ」
「うっわ、そんなにかわいくオレの名前、呼ばないでくださいよ。オレだって我慢できませんてば」
「あ、あ、」

性急に指を抜き、代わりに昂ぶる自身を宛がってやれば、悦んで飲み込んでいくかわいい蕾。ぎゅっと締め付けられる快感に沸き起こる射精感を、カイルは奥歯を噛み締めてやり過ごした。そんなに早く、果てるわけには行かないからだ。

さらに奥を穿ってやれば、高い嬌声が空間に響いた。その甘さに身も心も蕩かされる。肉体が感じる快感以上に、かわいい恋人が自分の与える快楽に溺れている事実が、カイルの興奮を煽った。

「王子……王子ッ」
「あ……や、……も、ダメッ」
「いいですよ、達って」
「んぁっ……んっ……はんっ……あ、んんっ!」

軽く肩に歯を立ててやると、アルジャンは甘い声を零しながら頂を極めた。きつい後孔に自身をさらに締め付けられて、カイルもすぐに後を追う。

身体を離して荒い息を整えながら、細身の身体を抱き込めば、潤んだ蒼い瞳が真っ直ぐにカイルを見つめていて。それだけで萎えた中心がまた熱を帯び、彼が欲しいという欲が湧き上がってくる。

「……王子」
「カイル?」
「すんません、もう少し」
「え、あっ……やぁんっ」

結局その夜、アルジャンは気を失うように眠りに落ちることになった。もちろん隣には、満足そうな笑みを浮かべる不良な女王騎士が寄り添ったまま。



「あ〜〜〜〜〜〜〜!」
「ど、どーしたんですか、王子!?」

いきなり耳元で聞こえた叫び声に、カイルは飛び起きた。朝の光の中艶かしい情事の跡を残した裸身を晒し、けれど少年は艶かしさの欠片もない呆然とした表情で虚空を見つめている。

「王子? もしもーし、王子?? 怖い夢でも見たんですかー?」
「……カイル」
「はい?」

ようやくアルジャンがこちらを向いた、かと思うと、恐ろしい顔つきで睨みつけてくる。美人はどんな顔をしても美人だー、などと鼻の下を伸ばしているカイルの耳に、飛び込んできたのは。

「カイルのバカ! 大嫌い!」
「え? えええ!?」
「しばらく近寄らないで!」
「ど、どーして!」
「……今日から、新しい衣装なのにッ! あれ、背中が見えるんだよッ! カイルのバカ、考えなしに背中に跡、つけただろうッ!」
「あ――」

しまった、とカイルが思っても後の祭り。アルジャンは膨れッ面でそっぽを向いて、カイルの方を見てもくれない。彼が余りにも背中が感じるのがかわいくて、ついつい調子に乗ってしまったのが今更のように悔やまれる。背中にはいくつもいくつもキスマーク。確かにこれでは、新しいあの衣装なら丸見えになってしまうだろう。

「おーじー」
「……」
「すみませんてばー。オレだって、理性が振りきれてたんですよう。ねえ、こっち向いてくださいよー。反省してますからー」
「…………」

反応を示してくれない恋人相手に、カイルはがっくりと肩を落とす。彼の機嫌を直すために、いったいこれからどうしたらいいのかと頭を抱えながら。


END

post script
王子の背中が丸見えの衣装を見てたら、浮かんできたアホネタ。うちのカイルは王子の尻に敷かれる傾向になる、のか?? とりあえずキスマークは、身体の前面推奨(笑) でも実は、上着を王子は腰に巻いてるんですよね〜ということに、書き終わった後気づきました……。





■BACK■