※VJの「怪物づかいツナ!」のネタバレがありますが、9割方捏造です。


キスと死神


『まぁまぁツッくん、怪物さんを仲間にする旅に出るの? 母さん感激だわー。実は今まで黙ってたけどね、うちのご先祖様は、あの伝説の怪物使い、ジョット様だって言われてるのよ。きっとその血が騒いだのね。ツッくんなら出来るわよ! あ、そうだ、今ブラウニーを焼いてたところなの。これを持っていきなさい。怪物さんはお菓子が大好きなのよ。きっとこのブラウニーをあげたら仲間になってくれるわ!』

 というわけで、ツナはブラウニーの詰まったバスケットをぶら下げて旅をしている。恐ろしい怪物を調教して手足のように操ると言われる怪物使いの旅支度とは到底思えない。
「っていうか母さんも母さんだよ……。一人息子が得体の知れないショタジジィの一言で旅に出るってのに持たせるのがお菓子だけってどういうことだよ……」
 だからと言って、何を持たされれば満足だったかというと、その前に止めて欲しかった、というのが正解である。
 リボじいという謎の魔法使いの話を聞いたツナの母親は異常にノリ気だった。いじめられっこの息子が奮起した(ようにリボじいが上手く言いくるめた)のが嬉しかったらしい。
 いやいや、ほら、オレ、農場の仕事もあるし……と逃れようとしたのだが、隣村のヒバリン騒動のせいで仕事どころではないらしい。もともと仕事のできなかったツナは、どさくさに紛れてクビを言い渡されてしまった。
 仕事を失ったツナに示されたのは、怪物使いになるかニートになるかの二択であった。きっと他にも選択肢はあったのだろうが、いじめられっこで根性無しのツナには、魔法使いのくせに魔法より先に手が出るリボじいに逆らうことができなかった。
 そんなわけで、ツナは隣村へと向かう街道を歩いているのである。
隣村へ向かうには、大きな森を越えなければならない。その森で出会った怪物を仲間にする必要があるわけだが……、
「いい天気だなぁ」
 森の中とは言え、街道が通っている場所である。ツナもお使いで何度か通ったことがある。しかも昼間だ。木漏れ日は柔らかく、風は澄んでいる。持っているのがお菓子の入ったバスケットなのもあいまって、ちょっとしたピクニック気分だ。
ただし、待ち構えているのはヒバリンである。
「ま、まぁ、吸血鬼は、昼間は寝てて動けないっていうし……」
 今回は本格的な戦いを挑みに行くわけではない。森で怪物を仲間にすることと、ちょっとした偵察が目的である。隣村の様子をこっそり伺って、すぐ帰ってくればいいのだ。旅というほどのものではない。怪物は仲間にできなかったと言えばいい。できなかったものはしょうがない。リボじいもツナを怪物使いにするなんてことは諦めるだろう。
そもそも、こんな村の近くの森に怪物なんかがいるわけがない。いたら今頃大騒ぎになっている。
 そんな気でいるものだから、ツナは意外と気楽に森の散策を楽しんでいた。
 だから、遠くからかすかに歌声が聞こえてきたときも、この道を行く旅人がいるのかと思っただけだった。
「〜〜〜♪」
 後ろから聞こえる歌声は、うきうきと楽しそうにはずんでいる。一体どんな人なのか、興味を持ったツナはそっと後ろを振り返ってみた。
「……あれ?」
 しかし、ツナの背後に人影はない。ならば動物かと思ったが、この森にはたくさんいるウサギやリスでもない。
 風に吹かれて、ざわざわと木々が揺れるばかり。
「〜〜〜♪♪」
 けれど、確かに歌声は聞こえてくる。そればかりか、どんどんと大きくなっているように感じる。
「え、ちょっと……」
 背筋にヒヤリとしたものが走り、ツナは足を止めた。この森で幽霊が出るなんて話は聞いたことがない。もちろん、トロールやゴブリンが出るなどという話はあるが、それは子供が夜に森へ行かないように諌めるための作り話であって、本当に怪物がいるわけではない。……はずだ。
「〜〜いな♪♪♪」
 歌声はいよいよ大きくなり、何を歌っているのかが聞き取れるまでになってきた。

「つ〜なよしさん、つなよしさん♪
 お腰につけた××××〜♪
 一発私にくださいな♪」

 下ネタであった。
「なっ、なんなんだよ! どこにいるんだよっ!?」
 歌詞の内容が下ネタだろうがなんだろうが、主の見えない歌声であることに違いはない。恐怖に駆られたツナは見えない相手を探してぐるりと空を仰いだ。

「ここですよ、ツナ」

 歌声とは違い、はっきりとツナに向けてかけられた声。それは、ツナの背後……の上からだった。
 黒いローブを着た男が、木の枝に腰掛けている。フードを目深に被っているせいで顔は見えないが、声からすればまだ少年のはずだ。ツナよりは背は高いだろうが、ゆったりとした黒いローブの上からも、体の細さが見てとれる。
 しかし、少年の特徴はそんなところにはない。
「お、お前……なんだ!?」
 青ざめるツナの瞳に映るのは、少年が持つ大きな鎌である。ツナも仕事で使うような、草刈り用の鎌などではない。柄だけでもツナの背くらいはあるだろうし、刃の部分も巨大だ。
人の首など一度で落とせそうなほどに。
「クフフ……僕が何か、ですって?」
 ローブを翻し、木から飛び降りる。体重を感じさせない軽やかな身のこなしで着地し、少年は被っていたフードを後ろに払った。
「はじめまして、死神のムクロです」

 死神。
魂を刈り取り、人に死をもたらす怪物。
 吸血鬼や狼男だって怖い怪物には違いないが、死神はそれらのいわゆるメジャーな怪物とは一線を画す存在だ。人間を襲い、結果死に至らしめるのではなく、直接的に死と結びついた怪物。
森に住んでいるような怪物とは違い、滅多に姿を現さないので実態もほとんど分かっていない。死神が死をもたらすのか、死期を迎えた人間の魂を集めているだけなのかもさだかではないのだ。怪物ではなく、名前の通り神の一種なのだと言う学者もいる。

「オレ死ぬのー!?」
 一般的に言えば、死神が見えた=死ぬ、である。青ざめるどころではない。紙のように真っ白になって、ツナは叫んだ。
「いいえ、違います」
 が、ムクロはあっさりと否定した。
「僕は、君の仲間になりにきたんですよ」
「ふぇ……?」
 ムクロがにっこりと笑う。その優しそうな笑顔に、ツナの頬がかすかに染まる。
(な、なんか綺麗な人……じゃない、死神だなぁ)
 透き通るように白い肌に、赤と青の色違いの瞳があつらえたように似合っている。夕闇色の髪は、風が吹くたびにさらさらと軽やかに揺れている。
(髪型は変だけど)
 ツナがじっと見つめていると、ムクロは笑みを深くした。
「僕は、君のご先祖様である、ジョットの仲間でした」
「それって、伝説の怪物使いの!?」
「ええ……。僕は彼の手足となり、悪い怪物と戦っていました」
 ムクロはどこか遠くを見るような目をした。ご先祖様のことを思い出しているのだろう。怪物は種族によって寿命がさまざまだ。ヒバリンのような吸血鬼は何百年という単位で生きるらしいし、死神も長生きな種族なのかもしれない。
「そして今また、彼の子孫である君が怪物使いとなって悪い怪物に立ち向かうと聞き、是非力になりたいと馳せ参じたのです」
「力に……って……」
 それはつまり、仲間になる、ということだ。
「ほ、本当に!?」
「ええ、本当です。死神は嘘をつきません」
 この旅(というか隣村までのピクニック)の目的は、森の怪物を仲間にすることだった。それがいきなり叶ってしまったのである。しかも、コボルトだのドワーフだのという怪物ではない。死を司る死神である。
(これならヒバリンも……!?)
「ですが、一つ問題があります」
 ムクロは優雅な弧を描く眉毛を歪ませた。困り顔ですら美しい少年である。
「僕は、怪物使いに使われる怪物として、ジョットに自分の力の大半を預けていました」
「そんなことできるの?」
「ええ、そして、ジョットの命令があったときだけ、ジョットを通して力を使っていたのです。ですから、今君の目の前にいる僕は、そこらにいる木っ端怪物程度の力しかありません」
(それにしちゃあ迫力あるなぁ。綺麗な顔のせいかな)
「ジョットがその身に封じた僕の力は、血を通して子孫に受け継がれ、今は君の身に封じられています」
「オレ!?」
 ツナは、リボじいがなんと言おうと普通の少年である。少なくともツナ自身はそう思っている。ご先祖様から死神の力を受け継いでいるなどと、生まれてこの方、気配を感じたことすらなかった。
「その力を返してもらわないと、僕は戦うことができません。ジョットのように、戦うときだけ僕に力を融通するという方法もありますが……僕が君の力の目覚めを感じたのは昨日のことです。ろくに怪物使いの修行など積んでいないでしょう? 君には無理です」
「ろくに……っていうか全然だけど……」
 何せ、怪物使いになれと言われたのが昨日なのだ。一応リボじいから、怪物使いの血が目覚めるというキャンディは貰っているが、それ以外のことはまったく分からない。ただ怪物を仲間にしろと言われただけだ。
「ですから……ね? 僕に力を返してください」
「か、返してって言われてもどうやって……」
 蕩けるように甘い笑顔で囁かれると、どうしても心臓が跳ねてしまう。ツナは、自分って面食いだったんだなぁと思い知った。
「君の体に封印されているわけですから、血を啜るか肉を食うか……」
「ヒィッ!?」
「しかしこんな野蛮な方法、僕は嫌いです。身体を破壊することなく命だけを刈り取るのが死神というものですからね」
 どちらにしろ怖いことを言っているのだが、とりあえずバリバリと腕や足をかじられる心配はないらしい。
「血でなくとも、何か体液を飲むことによって、力を取り込むことができるはずです」
「体液?」
「ええ……唾液・尿・精液、どれがいいですか?」
 ムクロはツナの目の前にビシリと三本の指を立てた。いい笑顔である。
「……え、ええと……」
「君の希望がないなら、僕は尿をオススメしたいところです。手軽に出せますし、精液よりは飲みやすいですし、量も……」
「わぁああああ!」
 突然何を言い出すんだこの男は! 
 慌てて喚いたツナを見て、ムクロがことんと小首を傾げる。
「精液の方がいいですか?」
「唾液で! 唾液でお願いします!」


「んっ、んぶ……はっ、んぅ……っ」
 勢いで唾液と言ってしまったことをツナは後悔していた。
「んー……ちゅっ、んっ、んっ」
 飲むとは言ったが、まさかこんな飲み方をされるとは想像だにしなかった。
 まさか、キスされるなんて。
「……ぷはっ、も、もう……っ!」
「だめです、まだ足りません」
「でも……んんぅっ」
 ムクロの唇がツナのそれを覆う。艶やかな唇の中から伸びた舌がツナの上顎をなぞると、ぞくぞくと背筋が震え、と同時にどっと口中に唾液が溢れる。そして、唇の隙間から零れそうになった唾液を、ムクロが喉を鳴らして飲み込んでいく。
(ほ、ほんとにオレのつば、飲んでるぅ……!)
 初めてのキスの感覚もさることながら、会ったばかりの美しい少年が自分の唾液を喜んでごくごく飲んでいるという倒錯的な状況に、お腹の奥のあたりがざわざわと騒いでいる。
「ふ……んん……、んー……っ」
「……んっ、まだです。もっと出してください、ツナ」
ぼうっと体が熱くなって、何も考えられなくなる。頭の中にピンクの霧がかかってきたところで、ツナはやっと開放された。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
 まだ頭の中が霞んでいて、ツナは怒る気力もなくただ立ち竦んでいた。膝が折れないようにするのに精一杯である。
「……クフ」
 ムクロはと言えば、
「クフフフフ……クハーッハッハッハ!」
 何故か高笑いをしていた。
「むくろ……?」
「クフフ……この指先にまで満ちる力、まさしく僕の力です!」
 空を振り仰ぎつつ高笑いをするムクロは悪役にしか見えないが、まぁ喜んでいるのだからいいだろう。ムクロに力が戻れば、ヒバリンを退治するときに役に立ってくれるのだし。
 まだ頬の熱が引かないながらも、ツナはそう考えたのだが、
「ありがとうございます、ツナ。もう君は用済みですよ」
 死神の鎌が、首筋に当てられた。
「え……?」
 実際には、刃は肌に触れていないのだが、紙一重のところで大鎌がクビにひっかかっている。この状態だと、ムクロが少し力を入れただけで、ツナの頭が切り落とされてしまうだろう。
「力を返したら、仲間として一緒に戦ってくれるんだよな……?」
「ああ、あれは嘘です」
 ムクロはにっこりと笑った。今の状況でさえなかったら、見惚れてしまうくらいの綺麗な笑顔である。
「死神は嘘つかないんじゃないのかよ!」
「まずそれが嘘ですし」
 悪びれもせずムクロが言う。 「僕はねぇ、ジョットに負かされた後、力を奪い取られてこき使われてたんですよ。しかもジョットは僕の力を体に封印したまま行方知れずになってしまうし。やっと子孫である君を見つけたと思ったら、怪物使いの血に目覚めていない。これでは力が取り戻せないと思っていましたが……」
 ツナの怪物使いの血は、完全ではないが目覚め(させられ)た。昨日のことである。
「クフ、怪物使いの血に目覚めた君から、僕の力を取り返しさえすれば、君に用などありません」
「え、えっと、じゃあこれでさよならってことで……」
 仲間になると嘘をつかれたことや、いきなりキスされたことはもうどうでもいい。それよりも、首元でギラギラと剣呑な光を放つ鎌をどうにかしてほしい。
「でもね、君ってジョットにとっても似てるんですよね……ムカつくので魂取らせて頂きます」
「どんな理由だよおおおおおお!」
 何故、顔も知らないご先祖様の所業のせいで、ファーストキスを奪われた挙句命まで奪われなければならないのか。泣きそうになりながら叫んだが、鎌が怖くて抵抗することもできない。
「力を取り戻すことができたお礼に、一瞬で終わらせてあげますよ」
それはお礼になっていない。ツッコミたかったが、それどころではないのだ。ムクロの目は本気である。
「ではさようなら、ツナ。来世では怪物使いの血に目覚めませんよう」
冷たい刃が、首筋に触れ、

「……!?」

しかし、刃は離れていった。
ムクロは呆然として自分の手を見つめている。
「力が……消えた?」
「え?」
「取り戻したはずの力が消えた! 貴様一体何をした!」
ムクロが今までの笑顔とは打って変わって鬼のような形相で鎌を突きつける。しかし、ツナには心当たりがない。
「くそ、もう一度……!」

「何度やっても無駄ですぞ」

 森の中に響いたのは、あどけない赤ん坊でありながらも、その中に老成したものを含む独特な声だった。
「その声は、リボじ……いてぇ!」
 ぎゅむ、と頭の上に何かが落ちてくる。すぐにツナの頭からその重みは消えたが、したたかに踏みつけられて、ツナはよろめいた。
「ちゃおっす、ムクロ」
「アルコバレーノ……!」
 頭をさすりながら顔を上げれば、ムクロとリボじいが対峙していた。死神と赤ん坊、シュールな図である。
「どういうことです、何が無駄だと言うんです」
「怪物使いの血に半分しか目覚めてないツナの唾液じゃ、何度やっても同じってことだ」
「半分……!?」
 ムクロの色違いの目がツナを睨む。実際リボじいの言う通りで、ツナが怪物使いの力を使えるのは特殊なキャンディを食べたときだけだ。
「しかも今のツナは、その血がほとんど眠ってる。その状態で唾液を飲んでも……まぁさっきみたいに一時的に力は戻るかもしれねぇが、もって三分ってところですな」
「そんな……!」
 地に膝をつき、がっくりと肩を落とすムクロ。そこまで落ち込まれると、流され易いツナは、何故か自分が悪いことをしたような気分になってしまう。
「あの……ごめんな?」
 腰をかがめ、落ち込むムクロを覗き込む。それが間違いだった。
「それならッ!」
「ひぃっ!?」
 ものすごい力で腕を取られ、地面に引き倒される。打ち付けた半身が痛むが、それよりも開いたムクロの口の中に見えた牙が問題だ。あんな鋭い牙があれば、人間の肌など簡単に食いちぎってしまえるだろう。
「僕の美学には反するが、体ごと喰らってしまえばあるいは……!」
「ぎゃあああ! やめてやめて!」
 ツナは持っていたバスケットをムクロの顔に押し付けて抵抗した。無論そんなものが死神を妨げるとは思えないが、組み敷かれている状態ではそれくらいしかできることがなかったのである。
 が、ムクロはそこでピタリと動きを止めた。
「……」
「……え?」
 ゆっくりとした動作で押し付けられたバスケットを両手で受け取り、ムクロは乗り上げていたツナの体の上から退いた。そして、ポツリと呟く。
「……チョコレートの匂いがする」
「そりゃ、ブラウニーが入ってるし……」
「ブラウニーですって?」
 ムクロの赤い右目がギラリと光った気がした。
「あ、ちょ……っ」
 ムクロはおもむろにバスケットの蓋を開け、躊躇することなく中のブラウニーの一切れにかじりついた。無言、無表情のままもむもむと咀嚼し、ごくんと飲み込む。
「これは……!」
 二色の目がカッと見開かれる。
「外も中もしっとりと焼き上がっているがけっして生焼けではなく、それでいてねっとりと濃厚なチョコレートの舌触りが感じられる……いや、舌触りだけではない、チョコレートの味と風味がまったく消えていない、素晴らしい……! 歯ざわりのアクセントであるクルミの量も最適、かつ、ローストが絶妙……。まさに至高のブラウニー!」
 感動したらしい。
「あの……よかったらそれ、どうぞ……」
「!? これを全部くれるというのですか!?」
「はぁ……母さんに言ったら、もっと焼いてくれると思うけど……」
「な……!?」
 ムクロはバスケットを抱きしめてブルブルと震えている。また感動したらしい。
「君を食べてはいけない理由ができましたね……。御母堂がブラウニーを焼いてくれなくなっては困る」
「そいつはよかった!」
 オレの命はブラウニーより軽いのか、とは思わないでもないが、とりあえず当面の危機が去ったのは喜ばしい。
「それどころか、君を守らなければならない理由もできてしまった」
「え?」
 ムクロがゆっくりと立ち上がる(バスケットを抱きしめたまま)。
「吸血鬼なぞに君が吸い殺されたら、君の御母堂がブラウニーを……」
「またそれかい!」
「ふむ、仲間一号ですの」
 この騒ぎを傍観していたリボじいが、ムクロの肩に飛び乗る。
「ツナの体液があれば力は発揮できるんだ。問題ないですぞ」
「ジョットの子孫に使われるのは屈辱ですが……ブラウニーのためには仕方ありません。それに、君が完全に怪物使いの血に目覚めるのを待たなければなりませんしね」
「……やっぱりそれは諦めないんだ?」
「もちろんです。力が使えるのが三分だけなんて、意味がない」
 しかもそのたびにキスしなければならないのだ。それを考えて、顔が熱くなる。
「三分だったのは、唾液で、しかもあれだけの量だったからですぞ」
「え?」
 ムクロの肩の上で、リボじいがニヤニヤと笑っている。
「体液の量と質によっては、もっと長い時間、力が使えますぞ?」
「量と質……」
 ツナを顔を見ていたムクロの視線が下がる。
「やはり尿か精え」
「それは絶対イヤだ!!!」