なんで初代がいるんだよとか思ったら負けです
短い一生の間でも、感情、主義、嗜好等、人の中身は日々変化していく。
永く生きている割に軸は揺るがない骸も、多少の精神的な変化は自覚している。
そしてそれを、今まさに、実感していた。
「骸」
薄い色の髪の上で、きらきらと春の陽光が弾けている。全てを見透かすように深みのある瞳は、あくまで優しい。それでいて、上に立つ者特有の王者の貫禄。
まさしく大空の名にふさわしい。
遠い昔恋焦がれ、今も骸の中に色濃く跡を残すその人が、骸にだけ美しく笑っている。
その手も、骸にだけ、向けられている。
かつて渇望したものが、目の前にある。
「む、骸……」
その間に割って入るように立つ少年の、泣きそうな顔。
未だ子供時代を抜け切らず、考え方はどこまでも甘い。
大きな瞳は、優しいというよりも、弱々しさを感じさせる。
どこにでもいる普通の…それよりももっと目立たない、小さな男の子。
本当に、人って変わるものですね。
小さくため息をついて、骸は微笑んで見せた。
その美しくも柔らかい笑顔に、男は目を細める。少年は、きゅっと唇を噛む。
骸は、彼にしては大変珍しい慈愛に満ちた笑みのまま、薄い唇を開いた。
「後悔しても、もう遅いですよ」
幼い10代目ドン・ボンゴレではなく、彼がかつて愛を捧げた初代ドン・ボンゴレに向かって。
せめて彼と出会う前なら、また決断も違ったかもしれないのにね。