twinkle x twinkle(本文抜粋 P19〜)



 今のはただ単に弟の興味を引きたかっただけで、特別性的なものを意識しての行動ではない。けれど、彼が赤面して焦っているのを見ると、何だか面白くなってくる。
「別に、このくらいで怒るなよ」
 くすくすと笑いながらわざと嫌な言い方をすると、彼は素直に苛立った。
「このくらい……」
「ほら」
 再度咥えて顔を突き出す。弟をからかうのは楽しかったし、余裕がある分自分の方が優位に立っているという思いもあった。早く、と急かすように口を近づける。
 ヒューバートはしばらく怖い顔をしていたが、徐に顔を傾け、目を伏せた。いやにゆっくりと唇が開く。その間から白い歯と濡れた舌が覗いた途端、かっと体温が上がった気がした。首が熱い。思わず息を止め、彼が苺の半分を齧り取っていくのを見つめる。離れた唇は果汁で湿っていた。彼の舌がそれを舐め取ったところで、口から落ちかけていた食べかけがシーツにぼとりと転がる。
「落としたら駄目じゃないですか」
 あーあ、とでも言いそうな口調で、ヒューバートがそれを拾う。果汁で赤くなったシーツなど気にも留めていなかった。くるくると汚れがついていないか表面を確認する。どうするのかと思ったら、口に挟んで当たり前のようにこちらにぶつかってきた。唇を冷たい感触が押し潰す。反射的に逃げようとすると、片腕で頭を掴まれた。間にある苺が無理やり唇を割ってくる。
 これは自分が食べるまで離してくれないつもりだ。悟って大人しく口を開ける。しかし弟は下がらなかった。それどころか、なくなった隙間の分だけ距離を詰めてくる。

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