07. 縛る / 08. 俺はそんなに優しい人間じゃない。



07.縛る
昔は得意ではなかった裁縫も、騎士学校にいるうちに必要に駆られてそれなりにできるようになった。
糸を止め、鋏で切って布の中に押し込む。弟が七年間も持ち続けていたお守りは、綻びもなく、綺麗な状態で自分の手元に戻ってきた。戦闘中に破れて中身のなくなってしまったそれに、今度こそ本物を詰めて弟へ渡してやりたかった。
「ヒューバート、これ」
出来上がったお守りを差し出すと、彼はおずおずとこちらを見上げた。
「何ですか?」
「やるよ。言っとくけど、今度のはちゃんと中身本物だからな」
「い、いりませんよ!それは兄さんに返したんです」
「そんなこと言うなって」
「やめ、ちょっと兄さん…」
手を取って無理やりお守りを握らせる。はい渡した、と笑うと、彼は泣きそうな顔で自身の拳を見つめた。
「いらなかったら捨ててくれ」
「…いいんですか?そんなことを言うと本当に捨てますからね」
「ああ、構わない」
するりと彼の手を撫でて宿の自室に戻る。ベッドに座り、剣の手入れをしながら彼のことを考えた。
きっとヒューバートはあのお守りを手放すことができないのだろう。七年間大事にしてくれていたように、これからもずっと。
一人でそっとお守りに触れる弟の姿を想像し、ほんの少しだけ可哀想なことをしたなと思った。

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