ZRX1100エンジンチューン
始まりましたエンジンチューンです。
まずはエンジンの分解から入ります。
すでにエンジン本体を車体から下ろして持込して頂いたので作業にすぐ入れる状態です。
ケースカバーを開けて外せるものから外していきます。
台車に乗せた状態からシリンダーヘッドとシリンダーを外します。
GPZ900Rと違ってZZR1100やZRX1100はオイルパンが飛び出ているため直に下に置いてしまうと座りが悪く、結局台座を製作するハメになってしまうので極力支えられる状態で分解してしまいます。

ここまででヘッドとシリンダーを外してしまうことで後の作業をやりやすくします。
最終的に外すのは同じです。
腰上が分解できたので今度はオイルパン側を分解していきます。
パイプ類を外してオイルフィルターを外すとパンが外せます。
パンを開けるとその中にオイルポンプが見えてきます。
これも全て外します。
ここで赤いオイルが出ていますが使用していたオイルがシルコリンレッドラインだったので赤い色をしています。
下回りが全て外れました。
これからクランクケース上下のボルトを外してケースを分割します。

ケースを分割すると上側ケースにクランクシャフト、下側にチェンジドラムが付いたままでミッションは上下に挟まれています。
あわてて落とさないように気をつけて外します。
シャフトを止めていたガイドを外してようやくクランクシャフトが外れました。

更にコンロッドも外してシャフトはダイナミックバランスを取ります。
コンロッドはピストン周りと一緒に重量合わせをします。
こちらはS氏本人がやってみたいとの事ですのでこちらでの公開はしません。
バランス取りが終わるまではケースを閉じることが出来ませんので次はヘッドの加工に入ります。
シリンダーヘッドの加工に入ります。
こちらは以前紹介したZRX1100とほぼ同じですが、今回排気ポートの拡大化を図ります。
エキゾーストガスケットいっぱいまで広げることも考えましたが、気持ち程度に抑えることにしました。
画像で右2気筒(1・2番)が加工済みです。
クランクシャフトのダイナミックバランスが終わりました。
とは言うもののほとんどズレは無かったそうです。
ゆびで指している部分が調整のために削り込んだドリル痕です。
以外にズレていないものですね。
クランクシャフトにコンロッドを組込んでアッパーケースに装着します。
コンロッドはピストンと一緒にS氏が重量合わせしましたが、こちらもグラム単位のズレしかなかったそうです。
量産品とはいえなかなか良い精度出ているものですね。
ロワーケースにZZR1100のミッションを汲みつけてみます。
ご覧の通りすんなり付きますね。
この状態でクラッチハウジングはまだZZRのままですが、この後ZRXのものに交換します。
クランクケースを閉じました。
画像はオイルパンを付ける前の状態です。
かなり駆け足で組み上げ手順を紹介しましたが、実際に組み上げるのもそれほど時間はかかりません。
腰下よりも腰上・シリンダー、シリンダーヘッドの組付けやその他のパーツを装着する方が時間がかかることが多いです。
シリンダーを組む前にピストンの比較をしてみます。
左がZRX1100で右がZZR1100・C型です。
明らかにスカート部分の長さが違います。
その分軽量化されていることもありますが、高回転型ピストンとも言えると思います。
下の画像はピストンピンを両方に通して繋いでみたところです。
ピンハイトは同じですのでそのままZRX1100のシリンダーに装着してもヘッドやバルブに接触することは無いでしょう。
フレームに腰下エンジンを載せたところでピストンとシリンダーの装着をします。
ご覧の通りそのまま装着できました。
ちなみにエンジンをフレームに載せる時は専用のジャッキを使うと思われがちですが、実際にはしょっちゅうエンジンを積み降ろししない限り使用頻度が低いので大抵の場合人力(笑)で積み降ろしします。
一人では危険なので大抵2人以上で作業します。
ここでミッションをZZR1100に換えたのでドライブ側のブッシュの長さが合いません。
元のZRX1100の物を抜いて使用しても良いのですがZZR1100のスプロケットが付属していましたのでドライブスプロケットはZZR1100・D用を使用しました。
ちなみにこの状態でZRX1100用はシャフトスプラインの厚みが違うのでチェーンラインが合わず使用できません。
残りはバルブクリアランス調整を残すだけです。
カムシャフトが換わりましたので元のクリアランスからだいぶ換わってしまうので同じ調整シムは使えないと思った方が良いです。
カムシャフト交換については前回作業したZRX1100同様の作業をしています。
バルブクリアランスも終わって始動です。
この時点でノーマルのZRX1100との違いはありません。
今回のチューニングでは大幅な変更が無いので走行してもすぐに体感できるのは6速ミッションになったところでしょうか…
しかしそれだけでもかなり乗りやすくなったと思います。
実際のところZRX1100で峠を走り込んでいくとどうしても中1速足りない感じが付きまといますので走りを楽しみたい人にはお勧めのチューニングではありますね。
装備品を装着して試乗します。
なかなか良い仕上がりになったと思います。
低速の太いトルクが若干消えて回して走りやすい仕様になったと思います。
この後多少キャブレターの調整をして完成になります。

ZRX1100は後に発売されたZRX1200よりもチューニングで楽しめるマシンだと思います。
1200はマシンとしてかなり完成されていますのでそのまま乗る方には良いバイクですが、さすがに1200ccもあるとかなりのトルクがあるので回して乗るには多少厳しいですね。
個人的にはZRX1100ではなくて「ZRX900」くらいで作ったら面白いんじゃないかと(笑)
S氏お手製のパワーフィルター脱落防止ステーです。
経年変化でフィルターのバンド部分の締め付けが甘くなってきて走行中に落ちてしまうことがありますのでコレはいいアイデアかと。
幅調整できるようにすればいろんな車種に対応できる製品になるかもしれませんね。
ここに来て更に、ネットオークションで落札したマグネシウムホイールが到着。
テクノマグネシオ・ZZR1100(D型)用です。
フロントはそのままボルトオンするのですがリヤは多少カラー製作が必要になるかと。
いやぁ…たまたま話のタネで「次はホイールですかね〜」と言うところからオークション見たらたまたま出てたんで落札してきてしまった…と言うわけです。
うーん、中古ですがかなり綺麗だし、新品買うよりも安価で効果的だから良しとしましょう(汗)
ZRXのノーマルホイールと比べてみます。
画像では判りませんが明らかにアクスルシャフト部分の幅が違います。
実際に入らない幅ではないのでここからホイールを計測してフィッティングの加工に入っていきます。
結構面倒ですw
と、改めて見比べてみて気付いたのがリヤのブレーキディスクを止めるボルト数が違う…ZZR1100は4本ですがZRX1100は5本なんですね。
これは困ったゾ?
いったいどうやって取り付けすればいいのやら…
ディスクのフィッティングを作り直せば簡単ですけど、削り出したら結構なお金がかかりそう。
うーん、とりあえずこちらは置いといて(ぉ)スプロケット側から攻めて行くことにします。
ホイールの計測が終わり左右の調整幅が出たところで、オーナーS氏がホイールに付属していたカラーを自分で削ってきてくれました。
本来なら作り直したほうが良いのですが…まあ取り付けして試走するくらいなら問題ないでしょう。
面は出ていませんが大体の幅に収まっているのでこれで取り付けしてみます。
無事にホイールは入りました。
この時点でブレーキディスクは付いていません。
ZRX1100に6インチホイールを換装するとチェーンカバーのステーが干渉しますのでここを切り取らなければなりません。
これはカバーとあわせてまたあとで。
チェーンラインはZZR1100とZRX1100ではホイールセンターから約6ミリ外側に出てしまいます。
これを修正するためにスプロケットハブを製作することにしました。
フロントスプロケットのオフセットも考えましたが、ZRX1100では2〜3oが限界でフレームに干渉してしまいます。
こればかりはどうしようもないですね。
右がホイールに装着されていたハブで左が製作したハブです。
上から見た画像では違いが判りにくいですが、横にしてみると違いは明らかで。
元々スプロケット自体をハブの外にボルト共締めする仕様を逆転してスプロケットを取り付ける面を内側に変更しました。
こうすることでホイール内側に4oチェーンラインを追い込むことが出来ました。
ホイールに取り付けた状態です。
取り付ける前の画像を撮ってなかったので違いを比較することが出来ませんが、かなり内側に寄ってます。
この位置でもチェーンはタイヤに干渉しない許容範囲です。
このあとハブにベアリングを打ち込んでカラーを取り付けます。
左側ホイールカラーも削ったのでほぼチェーンラインは出ているはずです。
装着してみますとぴったりきました。
元にハブを取り付けていたボルトではわずかに長くてスイングアームに当たってしまうのでワンサイズ短いステンレスボルトを使いました。
カラーをきっちりと計測して製作していないためかチェーンラインはわずかに外側に来ていました。

最後まで問題だったリヤブレーキディスクですが、デッドストックにZZR400用を発見しまして(笑)これがボルトオンするんですね。
ディスク径が小さいのでキャリパーサポートはZRX1100のものが使えず、同じタイプで同じディスクを使っているZXR400のサポートを使うことにしました。
サポートのカラー幅とディスク径しか見ていなかったので取り付けしたときに気付いたのがディスクとの左右位置がちゃんと出ないと言うこと。
ホイールが違うのだから当たり前なのですが失念していました。
現状でサポートとキャリパーの間に4o厚ワッシャーを咬ませて閉めこんでセンターを出しています。
またサポートがZRX1100よりも外に出るためブレーキホースがサポートと干渉してしまうため削り込んで逃がしています。
まあ、とりあえずこれで装着は出来ました。
最後にチェーンカバーの加工です。
6インチなので190幅のタイヤも履けるのですが、オーバークオリティというか…これ以上問題を増やさないために180幅を選んでいただきました。
装着した時点でカバーはタイヤに干渉してしまうので大きく削りを入れています。
もちろんステー部分は切り取ってあります。
こうして出来上がったホイール換装作業でした。
ベストとは言えませんが(ベストは専用ホイール装着)マグネシウムホイールの効果を実感するには十分なものが出来たと思います。

マグネシウムホイールは新品で購入すると高価なのでなかなか手に入らないですね。
中古品を手に入れる場合には状態や車種を良く調べてフィッティングやベアリング交換、再塗装等手間をかけても新品買うより安いのであれば購入しても良いかもしれません(曲がり・変形を修正するのはおススメしません)
なんとデジタルステッピングメーター(タケガワ製)とポケットナビが装着されましたw
なんでもメーターは以前から付けようと画策していたそうで。
ナビの使い勝手に少々疑問が残るところでは有りますが、メーターは一風変わったZRXになったのではないでしょうか。
次回に続く!かも…


back home reload