FZ750ファインチューン(中古仕上げ)
予定では足回り等多少の換装を考えていたのですが、予算の都合上ひとまず車両をきちんと走れるように仕上げることから始めることにしました。
中古車として仕入れた車両がどのように整備されて行くのか簡単にご紹介していきます。

まずは外せる外装を外していきます。
ちなみに最初に言っておきますが、この車両は自分が走行して店まで持ってきました。
アッパーカウルを外したフロントまわり。
見事にウインカーが傾いていますね。
左右に転倒もしくは引っ掛けた可能性があります。
この時点でアッパーカウルステーの大きなゆがみが無いことを確認しました。
問題はフロント周りの修理です。
フロントフォークオイル漏れ、ブレーキ効かず、ステムの動きが怪しいなど中古車にありがちな現象が出ています。
ホイール、フォークを外しました。
この状態でハンドルを切ってみるとステムのベアリングの状態がわかります。
案の定真っ直ぐにしたところ辺りで引っ掛かりが出ていました。
後ほど分解します。
フロントフォークのオーバーホールに入ります。
マニュアルが無い場合には一つ一つ順番を間違えないように外した逆の手順で組み付けていくわけなんですが…古いバイクではすでに分解されたことがあって組み方が間違っていることが多いです。
出来るだけサービスマニュアルか分解図組み立て手順をメーカーやサービスショップに問い合わせてから始めましょう。
やはり、組違いがありました画像に写っているアルミのパーツが上下逆に組みつけられていたばかりではなく、その間に入るべきウェーブワッシャーの位置も間違っていて、組み付け時に外れて咬み込んでしまっていました。
これは新品に交換するしかありません。
インナーチューブの躍動面にかなりの点錆が浮いておりメッキが剥れてしまっています。
多少の傷程度であればペーパーで修正可能なのですが、ここまで侵食してしまっていると再メッキか交換しかありません。
今回は中古車ですので今後のことも考えて新品交換することにしました。
新品のインナーチューブが届いたので早速組み付けます。
手順を間違えないように慎重に組みつけていきます。
フロントフォークはバイクの操縦安定やブレーキ等色々な要素に絡む重要な部分ですのできっちりと組み立てることでバイク本来の動きが蘇ります。
これは現在の高性能な倒立フォークでも30年前の旧車でも基本は同じです。

FZ750の場合トップキャップ下部にエアプレッシャー調整用の穴がインナーチューブに開いていますのでオイルを注入した後に倒して漏らさないように気をつけます。
別の作業に移る場合にはガムテープなどでふさいでおくのも一つの手です。

さて、次にトップブリッジとアンダーブラケットを外してみました。
やはりベアリングはグリス切れにより錆びて表面が侵されていました。
画像は上側のベアリング1対と下側のレースです。
下側ベアリングはアンダーブラケットに圧入されていますので同時に写すことが出来ませんでした。
新品のベアリングを組み付けてオーバーホールの終わったフロントフォークを組み付けます。
次にブレーキに入るわけですが…その前に別の作業の準備をしておきます。
キャブレターの分解をしておきます。
店まで走行してきたところで4番のキャブレターからガソリン漏れが発生していましたのでパッキンを換えるつもりで開けたところ、結構汚い状態でしたので分解清掃に入ることにしました。
しかもパッキンは前回開けたことがあるらしく固着したものを再利用していたため一部が欠けて完全に閉まっていない状態だったことが判明。
キャブレターを開けたらパッキン類は交換が原則です。
間違っても液体ガスケット等で閉じてはいけません。
ガソリンでガスケットが溶け出してジェットを詰まらせてしまう可能背が高いからです。

ちなみにFZ750のパッキンは初期型パーツリストに書いてある番号では間違いですので間違えないよう気をつけてください。
キャブレターを洗浄と並行してブレーキキャリパーの清掃に入ります。
が、どうしてもピストンの動きが渋かったため思い切ってキャリパーオーバーホールに踏み切りました。
通常分割不可なメーカーもありますが、ピストンが抜けない以上分割しないと抜けませんので…
思ったとおりダストシールとオイルシールのはまる溝にブレーキフルードのカスが固着してピストンを締め付けてしまっていたようです。
こちらはリヤブレーキマスターです。
ブレーキペダルの踏みシロがまったく無いため分解してみたところ、こちらはプッシュロッドが錆びて押せなくなってしまっていました。
しかし、シリンダーピストンはそれほど劣化が見られないのでプッシュロッドの錆を落として磨いて再度組み付けることにしました。
この部分は他の車種でも意外と見落とされがちな場所ですが、ブレーキは前後両方効いて正常ですからきちんと整備しなければなりません。
リヤのキャリパーもフロント同様の状態になっていました。
この時期のキャリパーはピストン径が大きいためか固着やピストンの錆、ダストシールの咬み込みなど多くのトラブルが見られます。
現在の高性能キャリパーに換えてしまうことも解決法の一つですが、整備としては解決にはなっていませんので…
綺麗に磨いて新しいシールを組込みます。
更に手を加えるのであればホーニングツールを使って磨くとより良いでしょう。
純正のベンチレーテッドディスクをスリットホール型に変更します。
冷却効率を図るためのベンチレートでしたが思ったほどの効果は出ず返ってソリッドなディスクの方が使いやすかったりします。
画像の装着ディスクはSRX600初期型のディスクですが、そのまま装着ではディスクの厚みが違いますのでブレーキパッド裏面に調整シムを咬ませます。
大きな部分としてはあらかた終わったところですが、ここでドライブスプロケットカバーを外して中の確認をします。
ここにはクラッチレリーズやニュートラルスイッチ、チェンジシャフト等が一緒になっていますからそれらに不具合が無いか点検します。
本来ならばこのドライブスプロケットにはチェーンダンパーゴムが巻きついているはずなのですが、経年劣化によって砕け散ってしまったようです。
この部分はチェーンの巻き上げるスラッジと混じったチェーングリスが溜まるところですから開けるたびに全て掻き出して綺麗にしてあげることにします。
巻き込んだスラッジがチェンジシャフトやクラッチプッシュロッドなどの動きを阻害してしまうこともあります。
FZ系の欠点ともいえる部分、イグニッションコイルの劣化はこの車両も例外ではありませんでした。
取り付けされている部分が色んな意味で厳しい場所であることも原因の一つなんですけど…
交換前のコイルはすでに応急処置として加工されてました。
すでに失火が起きているので中古品に変更しました。
こちらもいつまでもつか心配ですけど(苦笑)
フロントブレーキマスターもあまりタッチがよろしくなかったので分解整備することにしました。
案の定ストッパークリップ部分で錆とフルードカスが溜まっていました。
古いタイプのマスターなので本当ならシリンダー・ピストンごと交換が望ましいんですけどね。
ブレーキディスクをベンチレーティッドから変えたために厚みが少なくなってしまいましたので、それを補うためにブレーキパッドの裏側につけるスペーサーシムをステンレスで切り出してもらいました。
こちらも本来ディスクに合わせたキャリパーにするべきなんでしょうけど…予算の都合で(苦笑)
ちょっと小さくて見にくいかもしれませんが、このようにスペーサーを入れることでパッドをちゃんと押せるようにします。
ブレーキキャリパーのピストンが出過ぎるとピストンの傾きによる引っかかりや固着が起きやすいのでブレーキパッドは最後の最後まで使わないようにするのが良いです。
アッパーカウルの補修です。
元は左上のとがった部分が割れてありませんでした。
ちょうど良く先のU氏のFZが修理でアッパーカウル交換してまして、この一部を切り取ってくっつけてみました。
結構上手く付きました。
これでスクリーンを付けてしまえば多分判らないんじゃないかと…(笑)
サイドカバーに「FZ」のロゴマークが無かったのでステッカーキットを使って製作しました。これについては「店長ブログ」でも公開しています。
画像ではあんまり判りませんが全体的に色が薄いです。
プリンター印刷の所為なのか色指定違いなのかは判りませんが、すでに絶版なのでとりあえずコレで良いか、とw
データは残っているので今後色変更や再度製作も安価で可能なので駄目になったらまた作りましょう。
スクリーンとミラーを新品で装着します。
スクリーンはヤマハ純正ですがこの国内FZ750のものではありません。
ノーマルと比べて3センチほど高いスクリーンなので風除けには良いかと…
ちなみにノーマルよりこちらのスクリーンのほうが値段が安いです。
前後タイヤも新品に交換です。
16−18インチのタイヤなので選択の余地がほとんど無いのですけど…選んだのはミシュランマカダム50。
数年前までラジアルがラインナップで残っていたのですが、現在ではバイアスのみ。
そのバイアスですら無くなる可能性がありますね…
古いバイクには辛い話です。
このマカダム50、思った以上に乗り心地が良く、ピレリのスポーツデーモンに近いですね。
結構おススメです。
ようやく完成しました。
これでも一応形になっただけとも言えます。
実際に走行してみて不具合があればその都度修正や修理します。
出来るだけお客様が乗り出すときには不具合が出ないように直すのが中古車整備と言えます。
しかし年数が経っているマシンではすぐに故障症状が出ないものもあります。
すべてを直せれば一番良いのですが本体価格がその分上乗せされてしまいますから必要最低限でどれだけ直せるかショップの能力が出るのが中古車だとも言えるかもしれませんね。
やっと完成!


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