喉のやわらかい所に、先端が当たった。
「……う、う……っ」
カインの眦から、一筋の涙が零れ落ちる。
「――――舌を使え」
言えば、カインは哀しげな表情でゴルベーザを見上げた。青い瞳がゆらゆらと揺れている。額にはりついている金の髪が、やけに淫靡なもののように見えた。
後ろ手に縛られた手が微かに震える度、手枷と壁とを結んでいる鎖が嫌な音をたてて鳴る。
正座をしているカインの大腿の上には石の板が縛り付けられていて、立ち上がることも手を使うことも許されぬまま、カインは必死で舌を絡めていた。
「……ふ……う、うぅ、ん……」
耳朶を赤く染めてぺニスをしゃぶるその姿は、昼間の彼とはまるで違っている。
美しく伸びた背が印象的な竜騎士は、夜になるとゴルベーザの手の中へ自ら堕ちてくる。
ファブールでの一件以降、その堕落ぶりは酷くなる一方だった。
祖国への想いを捨てたくて、でも捨てられない男。自らの闇を見つめたくて、誰かにさらけ出したくて、でもさらけ出すことができずにいる男。それがカインだった。
セシルにもローザにもその心の内を晒すことができずにいたカインは、ゴルベーザにだけ、黒く濁った心の内をさらす。
カインは、心のどこかで痛めつけられたがっているように見えた。
「ん……うぅ、う……」
鼻で苦し気に呼吸しながら、舌の中心に先端を擦り付けている。飲み込みきれなかった唾液と先走りがだらりと垂れた。
上目遣いの瞳。
潤んだ瞳に、ゴルベーザの胸がどきりと跳ねる。
カインの口淫は緩慢で拙い。その拙さにひどく煽られて、頭が真っ白になってしまう。
「……う……っ!」
金色の頭を掴んで、揺すった。苦しげな喘ぎが聞こえてくる。虚しい気持ちに襲われた。心と体がばらばらになっていくような気がした。
喉の奥の、肉の感触。カインの頭をこれでもかというほど押さえつける。背筋に何かが走った。
「―――――っ!!」
閉じることも許されない、吐き出すことも許されないその口に、思い切り流し込んだ。
眼球が震えている。その様をじっと見つめる。
片方の手で顔を上向かせもう片方の手で喉に触れると、嚥下しているのが分かった。
「……カイン」
命令を待つ青い瞳が、期待に打ち震えて涙を零した。
End