「うあ、あ、あっ」
虚ろな瞳がこちらを見、涙を溢す。空にも似た青い瞳が、ゆらゆらと煌いていた。
どうして私は、こんなにもこの男に執着しているのだろう。
嫉妬と哀しみに暮れている彼の心と体が、欲しくて欲しくて堪らない。
そうだ、焦ることはない。彼の意識は私の手の中にあるのだから。
「ひ、い、あっ、ん…あっ!」
術で痛みを消してやれば、ただただ呻いていただけの声が、徐々に甘い喘ぎへと変わっていく。
握り締められていた掌が力を失ってだらりと垂れ、抽迭に合わせてシーツごと揺れていた。その手をシーツに縫いとめる。
触れた場所から溢れ出す彼の記憶は、『セシル』のものばかりだった。
一緒に買い物をした、剣を交えた、一晩中語り合った。他愛も無い記憶の一つ一つに『セシル』が埋められていて、それらが見えた瞬間、私の胸を何かが焼いた。
虚ろな空の色は、私を決して映さない。ガラスの色。まるで曇り空。
色を無くした瞳が語る。俺はお前のものにはならない、と。
頭が焼き切れそうだと思う。私達はこんなにも似ているのに、どうして。
「ああぁっ…あっ…んん…っ」
操られている彼は、快楽を従順に受け入れる。私はそのいやらしい姿に惹かれながらも、どこかで心が沈んでいくのを止める事ができない。
結合部から水音が響く。彼のものは限界まで張り詰め、だらだらと先走りを垂らしていた。
「い、く……っいく…」
子供のように甘えた仕草で、彼は首を横に振る。抜き差しを速めて射精を促してやれば、喉から笛に似た悲鳴をあげて彼は達していた。
瞬間、弧を描いた液体が彼の胸元と顔を白く汚す。かまわず、私は尚も貫き続ける。
「やめ…………、あ、はぁ、あ……」
こちらもそろそろ限界だった。
体だけでも自分のものにしたいと思い、中に注ぐと決める。
「……出すぞ」
彼は「はい」と小さく答え、頷いた。
目の前で光が瞬く。激しい快楽の波が私を襲った。
「あぁー……っ…」
恍惚の表情を浮かべ、彼は全てを受け止める。
体だけでも構わない。そう思っていたはずなのに、何故こんなにも心が淀んでいるのだろう。
蕩けそうな瞳が、上目遣いでこちらを窺っている。
彼の体から退く。白濁した体液が、彼の体から溢れて零れた。
End