お前は嘘つきだな、とゴルベーザ様に言われた。俺には何の事だか分からなかった。
「お前は、大きな嘘をついている」
 再度はっきりとした調子で言われ、俺は固まった。
 分けも分からぬまま、俺は立ちつくす。
「よく考えてみろ。私に嘘をつくな。……分からないというなら、自室でゆっくり考えろ」
 

 結局、答えが出ないまま自室にこもることになってしまった。
 私服に着替え、コーヒーを淹れ、テーブルにつき、考え事をする体勢に入る。
 嘘、嘘、嘘。嘘?
 どうしてゴルベーザ様は突然あんなことを言い出したんだろう。コーヒーカップを持って、はあ、と溜息をつく。
 昨日、俺は朝からゴルベーザ様の命令で外出していた。つまり、ゴルベーザ様と共に行動してはいない。
 帰ったのは夜で、それから、ゴルベーザ様の自室で一緒に過ごした。
 つまり、俺が“嘘をついた”とするならば、夜ということになる。
 ――――夜。
 心臓が大きく一度鳴り、顔がかあっと熱くなった。
 夜、彼としたことといえば、あれしかない。
「カイン」
 唐突に扉が開き、ゴルベーザ様が入ってきた。カップを置いて、わたわたと立ち上がる。
 ゴルベーザ様は嬉しそうな表情で笑っていた。
 あれは、何かを楽しんでいる表情だ。
「何か、ご用ですか」
 声が震えないように注意しながら、怖々問いかけた。
「答えは出たか?カイン」
「いえ、まだ……」
「そうか」
 ゴルベーザ様はこちらに歩み寄ってくると、
「なら、手伝ってやろう」
 俺の体を壁に押しつけた。
 薄紫色の瞳の中に、戸惑っている俺の顔が映り込んでいる。
「ゴルベーザ様……っ!」
 性急な手つきで、指先がシャツを捲る。乳首を強く摘まれ、「ひっ」と小さな悲鳴が漏れた。
「あ、あぁ……っ!ゴルベーザ、様……っ」
 彼の足が、俺の足を割り開く。
「だめ、です、昨日もしましたし……こんな、こんな」
「……私に命令するつもりか?」
「そんなつもりは、ありませ…………あぁっ!」
 耳朶を舐める舌は、いやらしい動きで首筋を這っていく。堪らず、俺はゴルベーザ様の首に縋りついていた。
 体に、力が入らなくなっていく。
 シーツに横たえられても、もう俺は抵抗できなくなっていた。
 下衣を下げられる感覚に、ぎゅっと目蓋を閉じる。
「胸を弄られただけで、こうなるのか」
「ひ……っ」
 俺のものが、ぬめったものに包まれる。腰が快感に震え、俺は荒い息を吐いた。
 先端をくじられる。吸い上げられ、追い詰められる。
「あぁ、あっ!!駄目です、やめて、ください……っ」
 ぴちゃぴちゃ、と濡れた音が響き、俺の頭の中は真っ白になってしまう。
 白濁を吐き出した後は、ゴルベーザ様にされるがままでいる他なかった。


 肌同士がぶつかり合う音が、俺の耳を犯す。獣の体勢で貫かれながら、俺はわけも分からず喘いでいた。
「……あっ、ああ、いや、いやだ……ゆるし、てください……っ」
 自分でも、何を言っているか分からない。
 気持ち良すぎて、頭がおかしくなってしまう。
「……答え、は、分かったか?」
そんなこと、考えている暇もない。
「では、ヒントをやろう」
 俺の体を抱え上げて、今度は座って俺を貫く体勢になる。挿入が深くて、苦しくて、でも気持ち良い。汗ばむ彼の肌を感じる。
 揺す振られる、全てが真っ白になる。
「あああぁ……っ!!」
 腰を持ち上げられ、一気に落とされた。何度も何度も繰り返される。
「いや、だ、やめてください、やめ……て……、くださ」
「嘘をつくな……、良いのだろう?食いちぎりそうなほど締めつけてくる」
「ひ、あぁっ!ああぁ……っ、あっ!」
 ゴルベーザ様の言葉に、全てを悟る。けれど、これは口をついて出てきてしまう言葉だから、コントロールのしようがないのだ。
 そして、答えが分かったから答えようと思うのに、口からは喘ぎ声とこの“嘘”しか出てこない。
「……分からぬのなら仕方がない。分かるまで続けるとしよう」
「ゴルベーザ様……っ!?」
 結局このあと、俺は声を枯らしてしまい、答えを言えなくなってしまったのだった。




End




Story

ゴルカイ