腰を引くと、白濁がごぷりと中から溢れ出た。
その感触にすら感じたのか、カインの体がぴくりと小さく跳ねる。
声もなくただただ甘い吐息を零しながら、彼は潤んだ瞳を彷徨わせた。
後腔がひくつき、更に白濁を溢れさせる。
もう体力の限界なのだろう。カインの瞼は、今にも閉じきってしまいそうだった。
「……ゴルベーザ、さ……ま……」
声は酷く掠れている。どれだけこの男を抱いていたのだろうと考えて、時間の感覚がまるでないことにゴルベーザは気がついた。窓から見える空はとっぷりと昏れていて、「長時間抱いていたのは確かだな」とぼんやりと思った。
押さえつけていた両の手首を開放する。そこは、微かに赤くなっていた。
「…………ゴル………………さ、ま…………」
話せば話すほど、彼の声は掠れていく。「黙れ」と低く言うと、小さく開かれていた唇がすっと閉じた。泣き出しそうな瞳が、ゴルベーザを見上げる。
側に置いてあった水差しの水をグラスに注ぐ。すっかり温くなってしまっているそれを口に含み、カインの顎を持ち上げた。
口付けると、カインの体がびくりと震えた。
「……ん、う……っ」
舌を絡めて、口に中にある液体を余さずカインの口の中に流し込む。
ねだるような切ない吐息にまた理性を飛ばされそうになり、さすがにこれ以上は、と身を離すと、カインのものがとろとろと蜜を垂らしているのが見えた。
本人はもう己が達しているのかどうかも分からなくなっているらしく、茫洋とした眼差しをゴルベーザに向けている。
底なし沼のようだ、と思った。
汗で額にはりついてしまっている金糸をそうっと梳いてやる。カインが何事かを口にしたので耳を寄せてみると、「部屋に戻ります」という言葉が聞こえた。
そういえば事が終わった後、カインはいつも己で体を清めて自室へ戻っていたように思う。主の部屋で主と共に眠るのは許されぬことだ、と考えているらしかった。
けれど、今日のカインは――――。
「……ここで眠れば良い」
カインはぐったりとしたまま動けず、眠ってしまいそうになっている。ゴルベーザの掌に額を擦り付けるようにしながら、カインは「駄目です」と小さく言った。
そうして必死で起き上がろうとするも、腕に力が入らないのかそのまままた仰向けの状態に戻ってしまう。
「ここにいろ、と言っている」
シーツを鷲掴んでいるカインの手に、ふわりと手を重ねた。しばらく躊躇った後、「はい」と震えた声が微かに響く。
カインは首筋まで真っ赤になっている。からかいたい気持ちになって頭を胸元に抱き寄せると、それは更に赤くなった。
「……ゴルベーザ様……」
どんな表情をしているのだろうと腕の中を覗き込むと、カインは熱に浮かされたような瞳のまま上目遣いでゴルベーザを見つめていた。
どくり、心臓が跳ねる。息が苦しくなった。この時が永遠に続けば良いのにと考えた己を恐ろしく思う。
――――使い捨てるには、いとおしすぎる。
すうすうと寝息が聞こえ始め、きゅうと胸が締め付けられる。
言いようのない気持ちになり、ゴルベーザはそっと自嘲の笑みを浮かべた。
End