体のあちこちが痛い。
涎の音が、耳に届く。己の口からだらだらと垂れた唾液が、床に汚く拡がっていくのを感じた。
視界は暗く、何も見えない。やわらかく黒い布で覆われた目は、その存在理由をなくしていた。
「……あ…………」
口もまた、俺の言うことを聞いてはくれなかった。『あ』のかたちになった口元は、閉じることを許されていない。唾液を飲み込むことも許されない。はあはあと、まるで獣のように息を吐く。『あ』と『は』が混じったような情けない声をあげながら、俺はゆるゆると首を横に振った。
首輪についた鎖が鳴る。首輪と膝の拘束具は鎖で繋がれていて、首を動かす度ぎちぎちと膝の辺りが痛くなった。
後ろ手に拘束された手は動かない。関節が固まってしまいそうなほど思い切り締めあげられている。
では、俺が自由にできるのはどこなんだろう。
そう考えた瞬間突き上げられ、脳天にびりびりと痺れが走った。
「は……っ、あぁ、あ……っ!!」
ゴルベーザ様は俺の思考を読んだのだろう。
楽しげな口調で、「ここはお前の自由にさせてやっているだろう?」と囁かれた。
ゴルベーザ様のそれを含まされたその場所はぐずぐずに蕩けてひくついていて『自由』とはかけ離れているような気がするのだけれど、ではこの場所以外に何か自由にできる場所があるのかと問われれば、答えは否だった。
「……あ……っ、はあ、あ……あぁ……」
中を抉られるその度に、脳にびりびりとした刺激が走る。真っ暗な視界に色とりどりの星が散る。ここがどこでどんなことがあって俺が何を考えて何をしようとしていたのか、俺が何に悩んで何を想っていたのか、何もかもが分からなくなる。
気持ちいい。
ただそれだけ。
今の俺は、単なる穴だ。ゴルベーザ様の名を呼ぶこともできやしない。
突っ込まれて馬鹿みたいな声でよがって涎を垂らして尻穴をだらしなく締めつけることしかできない。
こんな俺を見て、他人は俺を可哀想だと言うだろうか。
心と体の自由を奪われ犯されて――――だがこれは、俺が望んでいることなのだ。ゴルベーザ様に操られたがっているのは、他でもない俺自身なのだ。
自由などいらない。自由であればあるほど、心に迷いと黒いものが生じて辛くなる。
「ああぁ、あ、あ、あっ、あ」
がっちりと腰を掴まれて骨が軋む。腹の中に熱い迸りを感じた。
その熱さを感じた瞬間、俺も射精してしまった。
そんな俺を見て、ゴルベーザ様は楽しげに笑う。「カイン」と俺の名を呼んで、俺の頭を撫でてくれる。
もっと撫でて欲しくて、ゴルベーザ様の手に自らの頭を擦りつけた。
End