カインは酒に強い。だから、私は彼が酒に酔ったところを見たことがなかった。
 だが今、彼は酒に酔っている。
 カイナッツォが持ってきた“美味しくて度数の高い酒”は、あっという間に彼を酔いへと誘ってしまった。


 真っ赤な顔をして、こっちを見ている。目は蕩け、潤んでいた。
「ゴルベーザ、様……」
 呂律が回っていない。カインの手からグラスが滑り落ち、テーブルの上で倒れ、透明な液体を溢し始めた。
「……何か、熱くて……視界が、おかしい……」
 どうやら、本当に酔いというものを知らなかったらしい。初めて経験する感覚に、戸惑っているらしかった。
 濡れたテーブルに突っ伏そうとしているカインを抱き止め、抱き上げる。いつもなら恥ずかしがって嫌がるはずなのに、彼はとても従順だった。
「……抱く……のか……?」
 ベッドに横たえたその瞬間、彼はそう呟いた。
 崩れた言葉使いにどきりとしつつ、頷いてみせる。
 すると、彼は微笑みながら、シャツのボタンを外し始めた。胸元が露になっていく。前を開き、「触ってくれ」と上目遣いでねだった。
「……ゴルベーザ……」
 術が解けてしまったのだろうか。ならば何故、こちらに手を伸ばしてくる?
 カインの胸元はうっすらと桃色に染まり、乳首は尖っている。指先で撫でると、ぎゅっと目蓋を閉じて、甘い吐息を吐いた。
 扇情的な光景に抗うこともできず、今度は下衣を下着ごと膝まで下げる。驚いたことに、彼のペニスは硬さを持ち始めていた。
「大して触ってもいないのに……どうした……?」
 自分の声が掠れているのが分かる。カインの下衣を全て下ろし、それを床に放った。
 滑らかな脚を撫で、膝の裏を持って開かせる。ペニスの先端に舌を伸ばし、雫をぺろりと舐め取った。
「ひ、あ……っ」
 舌を絡めて唇で愛撫する。苦味のある液体が、後から後から零れ出してくる。
「ゴルベーザ、ぁ……、出る……」
 声は甘く、扇情的だった。このまま達させるには惜しい。
「ひっ!」
 思うと同時に、彼のペニスをきつく戒めていた。
 いつもとは違う視線。とても甘い、絡みつくような色を残す。
 垂れた先走りの液が、秘部を濡らしている。指でなぞると、ひくりと反応した。
 カインの髪から、リボンを取る。それで、ペニスの根元を縛った。
「……なに、す……っ」
 脚を肩にかけ圧し掛かり、彼の首の横に両腕をつく。頬を上気させながら、
「ゴルベーザ……」
 カインが見上げてきた。
 誘われるように、耳朶に齧りついた。柔らかい感触。びくりと震えた体を抱きしめて、腰を進めた。
「……ひ、あ……っ、ん!んぅ、うっ」
 根元まで埋め込む間に、唇を貪る。喘ぎを奪い取りながら、抽迭を繰り返す。甘い吐息が耳元を擽り、堪らない気持ちになった。
 きつく締め付けてくる内壁。そこは熱く火照り、うねっている。
 唇を解放すると、飲み込みきれなかった唾液が、カインの唇から流れ、顎を伝って零れていった。
「解い、て」
 彼のペニスを見る。限界まで猛り、苦しげに震えている。
「……解いて、く……れ……っ!」
 小さく首を振って拒否すると、カインは目を細めて瞳を潤ませた。
「……お前は、どうしたい?」
 このリボンを解いて欲しい、と言おうとする唇を指先で撫でる。そうではないのだ、と。
 ペニスを握りながら、親指で先端を潰すように愛撫する。悲鳴を漏らしながら、カインは眦に涙を浮かべた。
「どうしたいんだ?カイン」
 ゆっくりと腰を使った。生温い出し入れだ。絶頂には程遠い。
 ひっ、とカインの喉が鳴った。
「……ゴルベー……ザ……ッ」
「……何だ?」
 何でもない、という風な顔をして答えると、彼はこちらに手を伸ばしてきた。首筋に、絡みつく。
「頼む、から……」
 胸元に、顔を埋めてきた。
「……頼むから……いかせて……くれ……」
 激しく胸が鳴る。
 拒否することはできなかった。
 もっと焦らしてやろうと思っていたはずなのに、これではこちらの方が持たない。
 リボンを解いて軽く扱くと、白濁がカインの腹を汚した。




「……大丈夫か」
「…………大丈夫じゃ、ないです」
 シーツに包まりながら、カインはぷいとそっぽを向いた。
「頭が割れそうです……」
「では、ルビカンテを呼んで回復してもら――――」
「だ、駄目です。こんな格好を見せるわけにはいきません!」
「――そうか」
 確かに、鬱血の痕だらけの体を見せるわけにはいかないだろう。
「もう、酒はこりごりです……」
 私に背を向けている彼の耳は、真っ赤だ。どうやら、昨夜の記憶は残っているらしい。
「私は楽しかったがな」
 笑いながら言うと、カインはシーツを頭まで被り、みの虫になってしまった。




 End


Story

ゴルカイ