最初は無理矢理だったはずだった。
男の手は乱暴で痛くて、思考を抉る洗脳の術は不快で。
それなのに何故か今、俺は男のことを――――ゴルベーザのことを、受け入れている。
***
青い瞳が涙に濡れている。ずれた目隠しの向こうで揺れる青を、ただ手に入れたいと思った。
「……ゴルベーザ、様…………」
椅子に直接繋がれた革手錠が、軋むような音を立てる。その椅子に腰掛けたまま、カインはどこか虚ろな視線をこちらに向けていた。
最めは、もっと抵抗していたように思う。
椅子が倒れるほど暴れて、自らの肌が傷付くほど足をばたつかせていた。だが今は、抵抗の欠片も見当たらない。だらしなく足を投げ出したまま、思考を放棄しているように見えた。
膝裏を持ち、両足を大きく開かせる。無感情にも見えたカインの顔に、さあっと朱が走った。
「あ……っ!」
赤く充血した後腔が、太いディルドをいっぱいに頬張っている。今にも達してしまいそうなほどに勃ち上がっているペニスの根元には、彼の髪を結んでいた青いリボンが巻かれていた。
「やはり、私でなくとも良いようだな」
ディルドを掴みながら意地悪く囁いてやると、ひゅっ、とカインの喉が鳴った。
「ち、ちが……、ひっ!!」
ディルドを思い切り引き抜いて、叩きつけるように挿入する。
仰け反った白い喉に誘われて、思わず喉元に噛み付いた。
抜き挿しする度に彼のペニスはだらだらと先走りを垂らし、後腔をいやらしく濡らしていく。
「う、あぁ、あ、あっ!」
達したくて堪らないのに、自分でペニスに触れることはできない。リボンのせいで後腔で達することも許されていない。
半開きになったカインの唇の端から、唾液が一筋流れていった。
涙が溢れて零れる。
「……いかせ、て、くださ……っ」
当然の懇願だった。椅子に縛り付けてディルドを挿入してから、もう何時間も経過している。
「出したいなら勝手に出せばいいだろう」
わざとらしくそう返すと、カインは「リボンが」と蚊の鳴くような声で呟いた。
「……リボンを解けばそれでいいのか?」
ディルドから手を離し問う。リボンを解いてやると、カインの唇が微かに震えた。ゆるゆると首を横に振り、「ゴルベーザ様の」と掠れた声で彼は言う。
「……ゴルベーザ様、の、……っ、あぁっ!!」
ディルドを思い切り引き抜いた。
「私の……何だ?」
「…………ゴルベーザ、さま、の……を、入れ……て……」
羞恥で真っ赤になった顔を、笑いながら覗き込む。
「どこに?」
分かりきったことを問えば、カインの眦から涙がぼろぼろと流れて落ちた。
「俺、の、中に、入れて……下さい…………っん、あ……ああっ!!」
一気に貫いて、きつく抱きしめた。やわらかい内壁が締めつけてくる。耳元で響く叫びのような喘ぎが下半身を刺激する。
「ん、あぁ、あ……っ、ひっ!」
「……カイン」
カインは快楽を追うのに必死だ。ねだるように腰を揺すっている。
「ゴルベーザ様ぁ……っ!」
名を呼ばれると、それだけで心が軋む。
革手錠に手を伸ばし、拘束を解いた。こうしなければいけないような、そんな気がして。
一瞬、不思議そうな色を纏って青い瞳が揺れ動く。
「……ゴルベーザ様…………?」
長い間拘束されていたせいで上手く動かない指先が、私の頬を撫でる。
やわらかい唇が、私の唇をそっと塞いだ。
End