べろんと捲れた茶色の布の下に、期待に震える媚肉がある。
「……や、やめ……やめて、くれ…………」
 蚊の鳴くような声で言いながら、獣の格好で、スカルミリョーネは尻を突き出している。
 馬鹿だなあ、嫌なら逃げればいいだろう。幾ら弱いと言ったって、お前も四天王の一人なんだから。
 そんな気持ちをこめてのしかかると、スカルミリョーネは肩を震わせた。
 甘い腐臭と、柔らかな肌。
 触れれば分かる。こいつは俺を欲しがっている、と。
 だって、親指の爪をたてながら肉を割り開いても、こいつは逃げない。チンコの先を押し当てたって、逃げない。ぐうっと地面にへばりつきながら、ただただ体を震わせている。
 堪らない。嗜虐心を煽られる。
 スカルミリョーネが振り向き、こちらをちらと見る。金色の瞳の奥に滲んでいるのは情欲だ。
 俺は笑う。歯を見せて笑う。お前を喰ってやる、覚悟しろ、そんな気持ちをこめて。
 ゆっくりと挿入すると、スカルミリョーネの喉が笛の音を放った。
「ひぃ…………っ」
 片方の手で腰を支え、もう片方の手を前にまわす。雁首を挿れただけなのに、それはすでにいきそうに張りつめていた。
 ぬるついた先っぽを親指でぐりぐりと撫でながら、徐々に埋め込んでいく。
「い、いや、あ……あぁ」
 濡れているのは、スカルミリョーネのものだけではない。おれのチンコも先走りでべちゃべちゃだ。だから、スカルミリョーネの中を慣らす必要もない。
 もっとも、元々こいつは痛みなんて感じない体質なのだけれど。
 全部挿れきる前に、スカルミリョーネは荒い吐息を漏らしながら達してしまった。中がきつく締まる。
「本当に、突っ込まれるのが好きなやつだ」
「……ちがう……ち、が……っ」
「ほら、また勃ってきてるぞ」
「抜いて……っ、頼む、それを抜いてくれ」
「……『それ』じゃ分かんねえよ」
 わざとらしく腰を打ち付けてやると、スカルミリョーネの口から喘ぎが溢れた。スカルミリョーネはこんななりをしているくせに下品なことを嫌うから、『チンコ』なんて絶対言わない。
 そう、絶対言わない。普段なら。
「何を抜いて欲しいのか、ちゃんと言え……っ」
 肉のぶつかり合う音と濡れた音が混じり合い、部屋に響き渡る。すげえいい。ぎゅうぎゅう締めつけてくる。
 ほら、普段はすましている、ささくれた骨とちょっとの肉しかないその口で言えばいい。いやらしい言葉を口にすればいいんだよ。
「あぁ、あっ……んんっ」
 串刺しにしたままで、スカルミリョーネの体をひっくり返す。ローブが精液と先走りまみれだ。
 両足首を掴み、尻が持ち上がる位に脚を折り曲げる。一番太い所が引っかかるくらいのところまで引き抜いてから、一気に貫く。
「あああああぁっ!!」
 スカルミリョーネの背が弓なりになった。普段曲げている背を反らしたせいだろう、薪がはぜるような音をたてて、骨が鳴る。
 柔らかい感触の脚を肩に掛けて、その細い手首を地面に押さえつけた。
 金色の瞳が戸惑いを見せる。そういえばこの体勢で犯したことはなかったな、と思った。
 下っ腹が密着するくらい全部を含ませてから、ずるずると引き抜く。また突っ込む。掻き出すみたいにして抜く。
 スカルミリョーネの口から漏れるのは、喘ぎ声だけになった。
 可愛い声でなければ、甘い声でもない。獣みたいな声で喘ぐ男に、性欲を引きずりだされる。
「……いやらし、過ぎるんだよ……っ」
 いやいやをするように首を横に振って、腹が熱いとスカルミリョーネが啼く。抜いてくれ、お願いだから、と啼く。
「ちゃんと言え、ほら、言えよ……」
 舌を伸ばして、光る目ん玉を舐める。塩の味がした。俺と同じだな、と思った。
 床に押さえつけた骨っぽい手首が動く。不思議に思い、拘束を解いた。
 俺は驚きのあまり固まった。スカルミリョーネの両手が俺の頭を抱き寄せたのだ。信じられなかった。
「…………抜いて……チンコ……、ぬい、て……お願いだ、カイナ……ツォ……ッ」
 体中の血が逆流したような、そんな錯覚に陥る。
「……カイナッツォ……、許してくれ……頭が、おかしくなってしまう……っ」
 この馬鹿、どうにかなりそうなのはこっちだ。耳にかかる息は、情欲に湿っていて。
 こいつの中に出したい。こいつが欲しい。全部を俺のものにしたい。俺のことだけしか考えられないようにしてやりたい。
 腰を動かす。狂ったように動かす。
「ひ、あ、うああああぁっ!!」
 スカルミリョーネが喚く。そうだ、本能だけになれ、俺みたいに。
 俺の甲羅に爪をたて、スカルミリョーネが果てた。流石に、こっちも限界だった。
 奥の奥に流し込む。目の前がちかちかと光る。スカルミリョーネの金色も光っている。
 ああ、いきっぱなしだ。止まらない。
 俺の射精に感じたのか、スカルミリョーネがまた達した。
 入りきらなかった精液が、だらだらと床を汚していく。二人分の精液で、床はびちゃびちゃ、真っ白だ。
 蝋燭の火が消えるように、金色の瞳から光が消えた。
「…………おい」
 気を失ってしまったらしい。爪を甲羅に突き刺したまま、スカルミリョーネは体を弛緩させた。
 金色が見えないことが、酷く残念でならなかった。
「スカルミリョーネ」

 お前は知らないだろう。俺が、お前の目は綺麗だと思ってるってことを。
 お前は知らないだろう。俺が、お前の腐った体と匂いを気に入ってるってことを。
 なあ、お前は知らないだろう。
 俺が、毎日毎日お前のことばっかり考えてるってことを。

「おい、もう一回いいか。出し足りねえ」
 びくり。スカルミリョーネは薄目を開け、瞳を微かに光らせ、
「…………こ……」
「ん?」
「……この……体勢でなら…………いい、ぞ……」
 今日は、驚かされてばかりだ。
「しがみつける方が、いい……、でも、もう少しゆっくり…………あ、あぁっ!」
 下腹部に力が戻るのが分かる。思いっきり煽りやがって。
 荒い吐息が俺の耳を犯す。こりゃあ、もう二発はやらないと出しきれねえな。
 そうだ、やり終わったら言ってみるか。
 お前が知らない、俺の気持ちを。


End


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