例えるなら、そう、あの人の色は白なのだ。
黒い甲冑を身に纏い、黒魔法を操る。けれど、彼の本当の色は白なのだ。
揺れる薄紫色の瞳も、寂しそうな笑顔も、全て、太陽に反射して、きらきらと白く光る。
カインは思う。
誰があの人を黒く染めてしまったんだろう。
手を伸ばす。頬に触れる。柔らかい唇に触れる。この人はここにいる。
カインは一つ一つ確かめながら、男の体を撫でた。
覆い被さっているゴルベーザは、痛々しい瞳でカインを見つめている。今にも泣き出しそうな瞳だ。カインは身動ぎし、ぎゅっとその背を抱いた。
ここはバルコニーの床だ。冷たい、痛いと思いつつ、それ以上にゴルベーザの表情が痛いとカインは思った。
カインの目に、黒い鎧が映る。冷たい感触通りの、冷たい色の鎧だ。この鎧が、彼本来の色を隠している。そう思えてならなかった。
「……ゴルベーザ様は…………」
(何を恐れておられるのですか)
訊こうとした。けれど、言葉が出てこなかった。
黒い鎧のせいで、心臓の音も、体温も、感じることができない。
カインは黒く染め上げられていく男を想像した。指先の一本一本まで、心の端の一片も逃さぬように染められ、捕えられていく男を思った。
体を繋げる時だけ垣間見える、彼の白を感じたかった。
「…………っ」
下腹部を覆う装飾をずらされ、荒々しい手つきで服を裂かれた。鎧の内に着ているそれを裂かれるのは、もう何度目になるだろう。
最初は荒々しいのが趣味なのか、と思った。けれど、違った。
脱がせている時間も惜しいのだ。早く入れたくて、堪らないのだ。
(俺と同じだ。無性に、この人を感じたくなる時がある。本当のゴルベーザ様を、感じたくなる時がある)
足を折り曲げられる。
(この人から見て、俺は何色に見えているんだろう)
装飾と同じように、下着もずらされた。
おそらく、いや確実に、このままでは入らない。無理に入れれば、傷ついてしまうだろう。
カインは、ゴルベーザの躊躇いを感じた。ここまで強引にしておきながら、どうして。カインは少し笑った。
「……ゴルベーザ様」
両太腿の裏に添えられた手に、自らの手を重ね、
「傷ついてもかまいません。早く……いれてください…………」
言えば、頷きが返ってくる。
カインはきつい眼差しで、ゴルベーザの瞳を覗きこむ。
衝撃に耐えるために。そして、ゴルベーザの本当の色を感じるために。
End