もしかして、こいつは馬鹿なのか。
何で、こんなことをする。
「やめ、ろ」
いけねえ、声が上擦った。
ちろ、と金色の瞳が俺を見る。馬鹿、やめろ。
硬めの舌が、先端を抉いた。
体温は、まだ上がらない。だから、体を上手く動かせない。床に敷かれた布の上で、俺は頼りない体を晒している。大股開き、仰向けだ。何というか、とんでもない。
正直、甲羅が邪魔で起き上がれる気がしない。まるで、ひっくり返った亀みたいだ。
「う」
股間がぐちゅぐちゅと鳴った。自分でも馬鹿でかいと思っているそれを銜え、スカルミリョーネは舌を使う。スカルミリョーネはアンデッドであるからなのか唾液が少ない方なのだけれど、それを俺の先走り液がカバーしている状態だった。
「さっきの……本気にしてたのか?あれ、は……単なる冗談のつもりで……っ」
『申し訳ないと思ってるなら、俺の下半身に謝罪の挨拶でもしてくれ』
言った言葉はスカルミリョーネのパンチで遮られてしまったから、まさか、本当に“挨拶”してくれるだなんて思っていなかった。というかこいつにこういったことを強いたことはなかったし、これからだってさせるつもりはなかったのに。
何故なら、こいつはあんまりセックスが好きじゃないんだろうな、と俺は思っていたからだ。
「ん……ふ、んぅ……んっ」
必死で舌を絡ませ、節ばった指で何度もしごいている。
こいつは表情が分かり辛いタイプだから、他の奴ならじっくり見ねえと判別がつかないかもしれねえ。
でも、俺には分かった。
スカルミリョーネは、俺のを舐めて欲情している。
「……カイナッ……ツォ……ッ」
これでは、まるで新手の自慰だ。
ローブの股間部分にごそごそと手をやって、空いている方の手で俺のものを掴んで、息を荒らげてペニスに食らいついて。
愛しいといわんばかりのうっとりとした眼差しで、時折ふっと俺を見る。
ああ、突っ込んで泣かせたい。口も悪くはないけれど、やっぱり中に入りたい。こいつ、もしかして、わざとやってるんじゃないだろうか。
上下する手が早くなり、スカルミリョーネは腰をくゆらせる。ローブの裾が濡れていた。
駄目だ、もたねえ。
どうにかこうにか動く右手を伸ばして頭を撫でると、びく、とスカルミリョーネの体が硬直した。
「ああぁ、う…………う、んんっ!!」
同時に先端を噛まれ、俺も堪えられなくなってしまう。
情けない呻き声をあげて、生温い口の中に射精した。
「んん、んんうぅ……っ!!」
飲み下す音が聞こえ、「ば……馬鹿か、吐け!」思わず叫ぶ。
金色の光を微かに揺らし、体の割に小さ目の手で我ながらでかいなと思う俺のペニスをむんずと掴み必死で精液を飲んでいる姿は、俺を煽ろうとしているとしか思えなかった。
懸命に食らいついていたけれど、長すぎる射精にスカルミリョーネは降参してしまった。
口を離した途端、黄味がかった粘っこい液体がスカルミリョーネの顔を直撃する。
瞼の裏がちかちか瞬くほどの快感に見まわれ全てを吐き出すと、ぼんやりとした瞳と目が合った。
「……乗っても……いいか……?」
掠れた声でスカルミリョーネが呟く。ローブはべとべとになり、雫を垂らして重くなっていた。
「馬鹿野郎、やめろ」
肩で息をしながら、スカルミリョーネの体を押しのけようとする。けれど、まだ体は言う事をきいてくれやしなかった。
俺に乗っかって挿入しようだなんて、本物の馬鹿だ。自重で腹が裂けても、責任なんてとってやれねえぞ。
俺の腹に両手をついて、スカルミリョーネは大きく深呼吸し始めた。体が微かに震えている。怖いなら、やめればいいだろ。
金色が、揺れる。僅かに怯えを含んだ瞳が、堪らなく魅力的だった。
「……あ、あぁ……っ」
先端が穴にあたっただけで、スカルミリョーネは小さく喘いだ。
「う……あ……」
「……挿れてもいないのに、感じてんのか……?」
訊くと、瞳が陥落を語った。
体が熱くなってくる。
『我慢の限界』――――そんな言葉が脳裏を過ぎり、無我夢中で身を起こした。
いや、実際には起こせず、結局はスカルミリョーネの体を抱きしめ、転がり、押し倒すだけに終わった。腕の中の存在は、抵抗らしい抵抗をしない。まるで、食われることを待ち望んでいる獲物のようだった。
「足、開け」
命じたとおりに足を開き、両手で目元を隠してしまう。
さっきまで俺のものを舐めしゃぶっていたくせに、今更そんな反応をするのか。
「隠すな。……全部見せろ」
怯えた態度と瞳に、堪らなく惹かれてしまう。
ああ、虐め抜きたい。
ともすれば殺してしまいそうになる凶暴な感情と衝動を抑え込み、指と指を絡ませる。
「早く」とせがむ瞳に答え、体温の低い足を掴んで持ち上げた。
End