この凶器に刺し殺されたい。
そう思う俺の頭は、とうの昔に腐ってしまってるんだろう。
幼い頃とは違う、貪るような口づけ。吸い込まれてしまう。憂いを帯びた青い瞳に、喰われてしまう。
俺の中を抉る凶器は、精液と先走りと唾液と、ありとあらゆるものにまみれている。
突っ込まれた瞬間、どうにかなってしまいそうになる。体だけではない。心も、砕け散ってしまいそうになる。
「カイン」
切なげに、甘さと涙をない交ぜにしながら、セシルは言う。
「カイン、僕は君を――」
俺は後ろを振り向き、首を横に振る。
ローザを哀しませたくない。お前は幼馴染みだ。そんな気持ちを込めて振る。
背中にのし掛かってくる重さと熱さに、目眩が止まらなかった。
激しい動きに、ベッドが悲鳴をあげる。俺はシーツを鷲掴みながら、クッションを噛んだ。
乳首を痛いくらいに摘ままれて、頭が真っ白になる。
「ん、う、う……う、うぅっ」
セシルの動きは的確だ。俺が弱い場所、その全てを知っている。
「好きだよ、カイン……」
言うな。やめろ。
ベッドが軋む。思考が霞んでいく。
「ねえ、君は?」
ああ、好きだよ。独り占めしたいと思うほどに、好きだ。
でも駄目なんだ。俺達は、心を交わらせてはいけないんだ。
「君の本心を聞かせてよ」
嫌だ、言うものか。
彼女を傷つけてなるものか。
俺には、セシルとローザどちらかを選ぶことなんてできないんだ。
だから、俺はお前を選ばない。ぐちゃぐちゃに犯されようが、何万回愛の言葉を囁かれようが、お前を選ぶ気はない。
「カイン……ッ」
そんな声で呼ぶな、堪らない気持ちになるから。
「あぁっ、あ……あっ」
溢れ出そうな感情を、胸の奥底にしまう。
流れ込んでくる熱い液体に、背が仰け反った。荒い息が首筋にかかり、背が震えた。
「……せめて、君を好きでいることを許して欲しい。僕の気持ちに答えてくれなくても構わない。……ただ、君を想っていたいだけなんだ」
背に感じる彼の体温。振り向いて抱きしめ合えたら、どんなにか幸せだろう。
胸元にまわされたセシルの手にすがりつくと、「思わせぶりなこと、しないでよ」と彼が笑った。
End