「どうして簡単に引き受けた?」
 問うと、彼はぎろりとこちらを睨み付けてきた。
 暗いローブの中で爛々と輝くそれは金色で、綺麗だなあとカイナッツォは思う。
「ゴルベーザ様直々の命令だ。断れるわけがなかろう」
 予想通りの返事だった。
「用意は済んだ。私はもう試練の山に行かねばならない。だから…そこをどいてくれないか」
 呟くように言いながら、彼は細くて黒い手をぱたぱたと動かす。
 茶色いローブが小さくはためいた。
「嫌だ。俺の言うことを聞け」
 無理矢理部屋に侵入し、扉の前に立ちはだかる。
 暗く、表情の読めない彼の顔が、苛立ちに歪んだ気がした。
「退けと言っているだろう」
 声が微かに震えている。
 ゆっくりと首を横に振ってから頭に触れると、更にその体が小さく跳ねた。
「怖いならやめておけ。俺が代わりに行ってやる」
「…うるさい。黙れ」
「お前の弱さは俺が一番知っている。四天王最弱のお前が行くより、俺が行く方が早いだろう。 だからお前はここで待ってろ。セシル達を殺してきてやるから」
「誰が四天王最弱だ!勝手に決めつけるんじゃない!」
 辺りに閃光が瞬く。スカルミリョーネの叫びと共に、全身に痺れが走った。
(こいつ、俺にサンダーを落としやがった)
 僅かに残った電流が、カイナッツォの体の回りでぱちぱちと鳴っている。
「そんな攻撃で俺を退かせられるとでも思ったか?」
 笑いながら言うと、スカルミリョーネが後退りし始めた。追いかけながら爪先をローブに伸ばす。
「来るな!」
 悲鳴じみた声でスカルミリョーネが言い、それにそそられて彼の背を壁に押しつけた。爪がローブを裂き、部屋に湿った土の匂いが充満する。
 スカルミリョーネが床に座り込んだ。
「…く、るな」
 うわずった、まるで情事の最中を思わせる声。嗜虐の念が頭をもたげた。
「……勃っちまった。責任とってくれ」
 のし掛かり、それを擦りつける。ひゅうひゅうとスカルミリョーネの喉が鳴った。彼のローブの前を寛げ、骨ばっているんだか何だか分からない、臀部らしき場所を爪先で探る。あり得ないほど柔らかい肉の感触が、彼はアンデッドなのだということをカイナッツォに思い出させた。
「や、め」
 彼の瞳の光が弱くなる。
 カイナッツォは彼の耳元で囁く。
「試練の山に行くのをやめるなら、考えてやってもいい」
 スカルミリョーネの瞳の金色が点いたり消えたりを繰り返し、やがて決心したらしく、彼は、
「…………挿れてくれ」
 と返答した。
 限界まで猛った雄の先を柔らかい場所に当てる。抱き込んで、突き入れた。
 体温が低く、柔らかい内壁。何より、甘い喘ぎ声が頭の奥を刺激する。
「ん、あ…ぁ…ぁっ」
 慣らさなくとも、アンデッドであるスカルミリョーネの柔らかい肉はカイナッツォを受け入れるし、水で濡れたカイナッツォの雄は潤滑油無しに滑って、スカルミリョーネの内壁を犯す。
 相性最高だなと囁くと、「貴様、殺してやる」と途切れ途切れにスカルミリョーネが戯れ言を呟いた。無視して抽迭を繰り返す。
「…あ、あ、あぁ…う…」
「気持ちいいのか?」
「気持ち…いいわけ、な、いだろう」
「腰が浮いてるし、それにお前…気付いてないのか?」
 理解できない、とスカルミリョーネが首を傾げた。
「俺の背中にお前の骨が食い込んでるんだよ」
 スカルミリョーネの体が揺れる。
「気持ちいいんだろ?俺の体を離したくないくらいに」
 彼の背から伸びた太い骨が、カイナッツォの背に突き刺さっていた。
 ちらりとスカルミリョーネがそれを見、途端、いつもあまり締め付けてくることのない秘部が、引き絞るように締まった。
「うわ……すげえ」
「んん…ん、ん…っ」
「中に出してやるから……一滴も溢すなよ…っ」
「……っ無理、だ…ぁ、あっ!」
 一際大きな悲鳴と共に、スカルミリョーネが黄みがかった液体を吐き出す。ローブの裾がどろどろのそれで酷く濡れた。
 達したばかりで敏感になっているスカルミリョーネの体を、カイナッツォは貫き続ける。
「ふ…ぁ…ぁ、早く、出せ……つら、い」
「嘘吐きめ…辛いんじゃなくて、気持ちいいんだろ?」
 絶え間なく続く濡れた音。それに重なって聞こえてくる喘ぎ声。もう絶頂が近かった。
 スカルミリョーネは意識を保っているのも限界らしく、瞳の金色をちらちらと揺らしている。
「なあ…試練の山へ行くのはやめろ」
 言えば、スカルミリョーネが首を横に振る。
「死ぬぞ、お前」
「…かまわな……い…」
 嬉しそうな口調で、彼は言う。
「長く生きすぎて、少し、疲れた……」
「お前」
「そろそろ…死というものを体験、してみたいものだ……」

 瞬間、カイナッツォは彼の中に精液を放っていた。


End


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