また明日
また明日。
それは、毎日毎日、まるで呪いのように私の周囲で繰り返される言葉。
また明日。
また明日・。
また明日・・。
また明日・・・。
誰も疑わない。
明日があること。
明日も自分が幸せでいること。
明日も自分がその場にいる事。
でも、私にはそんなことはできない。
何も疑わずに生きるなんて、絶対にできない。
明日が必ず来るなんて、そんなこと誰が決めた?
なぜそんなことをこれほどに虚構しかない世界で信じられる?
言葉でおべんちゃらを言いつつ、実際には嘘と虚構しか話そうとしない「親友」。
みんなを気にかけていると抜かしつつ、自分の給料の事しか頭に無い教師。
明日は自分を殺しに来るかもしれない両親。
こんな、誰を信じればよいかすら分からないような世界で、私はいったい何を信じればいい?
私には何も・・・信じられはしない。
だから私は仮面を被る。
一枚じゃ足りない。
二枚でも足りない。
何枚も何枚も重ねられて醜く歪んだ、私にとっての理想を、仮面に被せていく。
ああ、息苦しい。
こんなもの、捨ててしまいたい。
心ではそう思っているくせに仮面は増えていく一方で、その上よく見れば周囲の人間も皆仮面を被っているものだから、それで私も安心してしまう。
だからこそ、家に帰ってからの私の生活は学校でつけていた仮面をはずすことから始まるのだ。
明るくて明朗活発。
そんな嘘で塗り固められた偽りの仮面を部屋の隅っこに放り投げ、自分の中にある原色の自分をさらけ出す。
本当は家の中では別の仮面――親に対して示す、品行方正で真面目な仮面をかぶらなければならないのだけど・・・今はまだいい。
ほんの少しだけ、私の地を出せる。
…………
ぼふん
音を立てて、自分の布団に体をうずめる。
でも、体の中で意識できる感情は恐怖。
…そう、怖いのだ。
仮面を外した状態で一人でいると、この世界の全てが嘘に思えてくる。
私なんかいないんじゃないか。
この世界自体が誰かの夢なんじゃないか。
そんな錯覚さえ覚えてしまう。
こんなことを考えてしまうのはきっと私が異常だから。
普通じゃないからこんなことを考える。
だってこの世界が突然崩れてしまうなんてありえない。
まだ今すぐ地震が来てこの家がつぶれてしまうほうが現実的だ。
それでも私はおびえている。
いつかきっとこの世界は壊れてしまう。
そんな妄想に取り付かれている。
だめ人間。
それがみんなにばれるのが怖いから仮面をかぶって、心に鎧を着せて。
けどそんな重いもの、ずっとつけていたら疲れてしまう。
だから私は自分の部屋の中でだけは本当の自分に戻る。
……なのに、怖がりな自分は自分の部屋でもやっぱり怖いみたい。
何もない部屋。
雑然と物が積み上げられていて、いろいろなものがおいてあって。
けれど何もない私の部屋。
ここには誰の部屋にだってあるはずの安心がない。
とげとげしい部屋。
作ったのは私。
これ以上ないってぐらい住みやすい部屋だから改良の余地もなし。
けど、怖い。
静寂。
これが怖いのだろうか?
だとしたら・・・そうだ、音楽をつけよう。
静寂が嫌いならやかましい音楽をつければいい。
ベッドの下にあるMDを取り出し、電源を入れる。
すぐさまイヤホンから五月蠅いだけの流行曲が流れてきた。
友人が貸してくれたMDなので文句を言うべきではないのかもしれないがもう少し趣味のいい曲を聴くべきだと思う。
なんでもこの歌を歌っているグループの何とか言うやつのファンらしいのだけれど私にはよくわからない。
・・・というよりかっこいいから、って理由で貸すならMDじゃなくて写真とかそういうものを渡すべきじゃないだろうか?
………………………。
しばらくは流れ出る音を無造作に聞いていたけれど、やがて私はイヤホンを耳からはずした。
あまりにも・・・空虚で無意味だ。
こんなものがほしかったわけじゃない。
もっと、普通では得られないようなものがほしいんだ、私は。
――じゃあそれは、例えば、何?
自問自答で、少し考える。
答えはすぐに出た。
と言うよりも、初めから答えは決まっていたのかもしれない。
心が求めているのか、それとも体が求めているのか。
――そう、たとえば自分の血なんかどうだろう?
思った瞬間口の中に広がる、濃厚な血の味、匂い、そして、吐き気。
カッターは机の引き出しの中だ。
はっきり言ってとりに行くのが面倒な気もする。
ほんの五歩だがそれが果てしなく長い。
それでも私は何とか体を起こし立ち上がる。
あの高揚感に比べればこれぐらいの労働、なんと言うことはない。
引き出しの中は部屋の中と違い、入っているものは少ない。
ほとんど全部机の上に広げてしまっているのがその理由だが、おかげでカッターはすぐに見つかった。
カチカチ、という音とともに無骨なデザインのカッターの中から白銀の刃が現れる。
見ただけで私の背中を何か得体の知れないものが走り抜けた。
痛いだろうな・・・・。
血、いっぱい出るかな・・・。
もし失敗したら死んじゃうかな・・・・。
毎日のように繰り返しているくせにこの感覚だけは変わらない。
近くにあった紙に刃先を薄く当て、横にスライドさせる。
それだけで紙に空白の筋が入った。
左手のリストバンドをはずすと赤い筋が何本も入った皮膚が露出する。
見る人によっては痛々しいものであろうそれも私にとっては勲章のようなものでしかない。
きらきらと光る刃先をまだ比較的白い部分の残っている皮膚に当ててすっと引く。
最初は何もなかったかのように時間が過ぎる。
痛みもほとんどない。
まるで肩透かしを食らったような感触。
けれど・・・ここからだ。
やがてゆっくりと血がにじみ出てくる。
それと同時に、まるで思い出したようにやってくる痛み。
・・・痛い。
血が出ている。
そんな当たり前の考えが頭の中を回る。
だからどうしよう、とか考えるわけではなく、その感覚自体を楽しむ。
血が止まるまでずっと、流れ出る血をなめとり続ける。
嗚呼。
私はまだ、生きている。
今日も失敗しなかった。
良かった。
本当に良かった。
私は安堵とも後悔ともつかぬ複雑な感情と共に、カッターを机の中にしまいこむ。
――さあ、もうすぐ親が帰ってくる。
机の上に置きっぱなしにしてあるもうひとつの仮面が警告する。
――そんな事、言われなくても分かっているのに。
少し愚痴を言いながら心に鎧を装着しなおし、仮面を被り、最後に左手にリストバンドをつける。
私が全ての支度を終えるのとほぼ同時に、カランと音をたて、我が家の扉が開かれた。
さあ、私の親を迎えに行こう。
でも、私は馬鹿だから。
だめ人間だから。
どれだけ仮面をつけても、ううん、きっとつければつけるほど、飾れば飾るほど、私はこの自傷行為をやめられなくなってしまう。
きっと、死ぬまで止めようとしないのだろう。
でも・・・なら・・・その死はいったいいつくるのだろう?
昨日は、死ねなかった。
今日も、死ななかった。
なら・・・・続きは・・・?
続きは・・・・また明日・・・・。
(注)続きません
後書き
再利用品故、出来はあまりよくないかも。管理人の苦手なジャンルトップクラスではないかと。
蒼來の暴走(?)
・・・藁○形に
あの馬「へ?」
藁人○に
あの馬「伏字になってないよ?」
○人形に
あの馬「・・・いきなりどした?」
ごっすんごっすん五寸釘〜!!!!
あの馬「マテーーーーーーーーーーーー!!!」
すっきりしましたw
あの馬「いきなりニコニコネタから始めないでよ・・・今は、ダークさんの作品の感想でしょ?」
はい、ここの題名良く見る。
あの馬「蒼來の・・・・暴走?!」
はい、ダークさんの言うとおり嫌いなジャンル・・・なので気持ちを最初に表してみましたw
で投稿規程通り感想は無いw
あの馬「マテ」
またないよwちなみに蒼來は上記のように追い込まれたら・・・開き直って行きますwだからいい加減な人間なんだよねエw死ぬの嫌だしw
あの馬「社会のルールは守るようにね」
なるべくそのつもりだけどね。いざと言う時は無視するだろうなあ。
