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魔法の日々
「炎天下のところで遊んでばっかりいるんじゃないわよ」 そう、あの人もそう言ってたな。椿は自分の思考がすべて達海に結びつくことにためらいがない。 「ゆっくり寝たら治るわよ」 メシ食って昼寝だ、の言葉に椿はまたぱさぱさのサンドイッチを想像したが、昼はカウンターにラップをかけた食事が用意されていた。 「散らし寿司だ。昼から豪勢だねえ」 つんと甘い酢の匂いはこの暑さの中でも食欲をそそられた。おばちゃんいっつも多いからちょうどいいや、と達海は皿に取り分ける。 「牛乳……はあわねえなあ。麦茶でいっか」 大きな冷蔵庫をがぼんとあけて、ペットボトルを取り出す。椿は慌てて手伝いに寄って行くと、察した達海がこれ持ってって、とプラスチックのコップを差し出す。 「いただきます」 「い、いただきます」 達海が生真面目に手を合わせて唱える言葉を追って、椿も慌てて手を合わせる。 「うめーな」 達海は背を丸めて口から箸に乗せた寿司を迎えにゆく。それは先ほどの礼儀正しさとは逆の行儀の悪さで、椿は思わずむせそうになる。 食べ終わった皿を下げ、昼寝しよーぜ昼寝、とさっさと食堂を出る後姿を椿は追いかける。がらりと引き戸を開けた部屋は十畳ほどあろうかという和室で、真ん中にぽつんと布団が敷きっぱなしになっていた。 「二人だとせまいから、横に使うか」 達海は枕を椿に投げ、自分はタオルケットを丸めて枕の代わりにした。布団を横に使って寝転んだ二人は達海はもちろん椿も足が出てしまい、椿はキャンプみたい、と目を丸くしている。 でも隣にいる男は父親でも先生でも、まして同級生でもない。椿は平和な村に住んでいるにも関わらず本人の天分でもって用心深く、まあ、オープンでない性質なのにこの髪の毛はテレビでしかみないような明るさの若い男に簡単に心を許してしまっているのだ。 エアコンのない部屋は窓も開け放しだが、ちょうど窓の外は木が繁っており涼しげな風も入ってくる。存分に体を動かし、腹もくちた椿はかんたんに寝入ってしまった。 目が覚めると昼間の灼熱は姿を消し、蝉の声もずいぶん遠くになっている。身を起こした椿に達海は起きた? と声をかけじゃあ帰ろうか、と投げられた言葉の絶望感。 「そんな顔しなくても、明日も来たらいいじゃん」
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満願成就のさるさんとの合同誌です。 さるさんのサッカーのなくなってゆく世界のふたりまんが40枚と私のタッツ暗野前夜の24歳が9歳椿に出会ってサッカーを教えるテキスト46枚です。
世界中のばきたつ好きのかたにお手に取ってもらいたい、そして私もばきたつがすき! すき! と感じていただけたらものっすごいシアワセです。
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