リビングの中央に置いたこたつに達海は肩までもぐりこんで背をまるめた。目は半分閉じて、口角をあげた口元はいかにも満足そうだ。 椿はいま気付いたというようにばたばたとお茶をいれるために台所できょろきょろしていた。お湯を沸かして、その間に母親が置いていったティーバッグやカップを水屋から出す。それだけのことなのに勝手がわからず暴れているのだ。家庭科教育を受けている世代というのにだらしない。 でも恋人が部屋にやってきたなら仕方ないかな。 「ど、どうぞ」 「ありがと」 ばらばらのカップはいかにも独身のひとり暮らしだが、達海も椿もおたがいさまなのでまったく頓着しない。 椿はすこし悩んでベランダを背にした達海の右側の布団をめくった。広々と寒々しいリビングだったが、こたつを真ん中に据えただけでかんたんに居心地のいい場所になってしまった。 母さんすごいな、なんて椿は思うが、隣で達海がよっこいしょ、と腕を出してお茶を飲むとそのとぼけた考えに赤面してしまう。 ちがう、俺が現金なんだ。 「こたついいなー。お前の親すごいな!」 「は、はは」 椿は同い年の大阪に住むライバルのような存在と似た、複雑な笑いを漏らした。 椿が座った場所は正面を向いていても、達海が熱いのかゆっくりとカップを上げながら口をとがらせて飲む様子やふと手を止めやっぱりやめた、とそれを置くさまなどが目に入り、椿はだんだん首や肩を傾けてゆく。 目が離せない、ってこんな感じなのかな。 ゆるい冬の陽射しを背にした達海の輪郭はあまくぼやけていて、椿はこの部屋を探した当初の目的も忘れてすっかり見蕩れている。 「……?」 黙り込んだ椿をちらと盗み見た達海はうわ、と手元のカップを強く握る。そっぽを向かないのがせめてもの意地だ。 なんて顔で人のこと見てんだよ。 もー、と口をとがらせて達海はこたつのなかの椿の脚を蹴った。 「わあ」 心底おどろいた、という大きな声で椿が揺れる。ばーか。
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コピー本。これもいわばパラレルですねえ、シーズンオフ話。 こたつえろの話をずっとしていて、それに便乗したようなものです。しかし恋人の部屋てタイトルは色っぽくていいね! サニーデイ・サービス知っておろうな。
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