Mon Amour Tokyo de l'est (緑)










達海は頬を赤くして涙ぐむ椿の顔をじっと見て、なんなの、ともらしたが椿はふるふると首を振りものいいたげに薄く口を開いたままごめんなさい、とだけ続ける。
「……なにこれ、おまえ、知ってんの……?」
「きっと、お、俺のがうつったんです」
「……?」
達海は要領を得ない椿に眉間のしわを深くする。ま、いいか。ここで椿が来たことは僥倖、と椿の頬へ舌をのばした。
「しょっぱ」
「……かんとく?」
ぴく、と途惑った椿の顔に羞恥だけでない興奮がよぎるのを達海は見逃さなかった。そして達海はおなじものにすっかり体を覆われているから、そんな表情ひとつが火に油だ。
「……おまえ、これ知ってるんだな? だったら、今俺がどうしてほしいかわかるんじゃねえの」
ベッドに着いた椿の手はこまかく震えている。達海はなだめるように自分のそれを重ねて、じっと体温が伝わるのを待った。
「……はい、たぶん……」
椿はためらいながら達海の節の立った指に自分の指を絡めて力をこめる。指先からでも伝わるその熱さは記憶にあるもので、それが少し前に自分が持っていたものなのかそれとももっと以前に同じそれに触れたときのものか椿にはわからなくなる。
強く握られる刺激とより深くなったシーツのしわに達海は深くため息を漏らした。
すると椿は達海のため息をすくうように唇を重ねてくる。先ほどの頬とはまるで違うあまい舌に、達海はん、んん、と声が漏れる。椿は薄く目をあけて表情を確かめようとしたが、きゅうと閉じられたまぶたと眉間に寄せられたしわを見てずくんと汗が噴き出る。
だんだんと前のめりになって、達海の腕が首や背中に届くようになると椿の両腕もすこし自由になり汗で湿ったタンクトップのすそへ手を伸ばしてゆく。触れた肌は汗のせいか意外なくらい冷たく、底にある熱を想像させる。
そしてなにより、達海がじかに触れてもシャツがかすってもふん、ん、と声を漏らしぴくぴくと腰を震わせるのには参った。唇をほどけばもどかしげな声がこぼれてひとつのことだけを訴える。
「かんとく、触っていいスか?」
椿は痛いくらいに張りつめてきた自身はさておき、とりあえず一度達海を楽にしようと尋ねる。
「うん」
熱のおおもとは身に覚えのある張りつめかたで、椿は慎重に指を伸ばした。
先端には触れないよう、根元からゆっくり包んででついとかたちをなぞる。それだけで達海は椿の肩口に顔を埋めて背中をまるめる。小刻みに震える体は快をこらえているのだ。
堂々とした態度に小づくりな体。腕を回して抱えたら収まってしまうんじゃないかといういとけなさに椿はまた別の回路から下半身を刺激されるが、ここは今そういう時ではないのだ。
それでもあらわな耳が近くにあると唇でつかまえてしまう。すると達海はぅあん、なんて声をあげて仕返しとばかりに椿の耳にねぶりつくからうっかりいま握っているものが自分のもののように動きを早めてしまった。
ふ、ぅん、ん、ん。しばらく椿の耳を食んでこらえていた達海は、解放とおなじにそれからも口をあけて、ひゃ、ぁぁん、と声をこぼした。
椿だってそんなふうにされたらこらえられる訳がない。きゅんと達海に回した腕に力がこもったかと思うと、二、三度ちいさく痙攣してあーあ……とため息をついた。
「いいじゃん、どっちにしたって俺ので汚しちゃったし」
達海はまだ小さく体を震わせたまま、けろっと椿に言う。確かにTシャツだって腹を濡らしている。
「まあほら、脱いで脱いで」
わかっているのかいないのか、つぎを促すような言葉に椿は改めて顔を赤くする。
「おまえのもしてやるからさ」