意外なところで、意外な名前に驚いた。
それから改めて目の前の少年に視線を移す。
気のせいか、髪の色が自分と似ている。
――――――未練だ。
一瞬うかんだ可能性を、クラトスは即座に否定した。
けれど一瞬だけうかんだ可能性に、すでに心は傾きかけていた。
そう思うと、少年の口元に彼女の面影が有るような気がする。
生意気そうな少年の瞳の色は、自分と同じ鳶色。
――――――未練だ。
そう思ってしまったから、そう見えるだけだ、と自分を納得させる。
彼女を殺したのは自分で、我が子を守れなかったのもまた自分なのだから。
けれどあの日。
彼女の骸も、我が子の骸も、彼は見つけることが出来なかった。
小さかった我が子だけならば、獣に食われてしまったのだろうと思えるが……彼女の骨も残っていなかったというのはおかしすぎる。
崖の下に散らばるディザイアンの死骸に、総てを諦めてしまったが――――――
もしも我が子が、生きていてくれたとしたら?
目の前の、鳶色の髪をした少年ぐらいに育っているのではないだろうか――――――?
マーテル教会聖堂クラトスさん視点。
こんな感じだったら、いいなぁ……