繁栄世界と衰退世界。
 役割の異なる世界にあっても、『神子』にかせられた役割はかわらない。

『……こんなの、俺様はごめんだ』

 だからこそ、彼女には本音をもらしたのだろうか?






 フラノールの冷たい風に髪を揺らし、コレットはぼんやりと考える。

「……冷たいなぁ」

 そう、冷たい。
 一年を雪におおわれたフラノールの地にあっては、『寒い』という言葉はすでに忘れられている。
 常に『寒い』を通り越した『冷たい』。
 冬が来たらどうなるのだろうか。
 『冷たい』を通り越して『痛い』のだろうか。

 どちらにせよ、コレットには想像してみる事しかできないのだが。

「ロイド、受け取ってくれるといいなぁ……」

 寒さに身体を縮ませてながら、コレットは自分のポケットを確認する。
 手袋越しに、小さな袋の感触。
 宿をこっそりと抜け出して買って来たお守りが入っていた。

「幸福のお守りかぁ〜」

 白い雪道に足跡を残しながら、コレットは早足に歩く。
 とにかく外気が冷たい。
 早く温かい宿に帰りたかった。






「あっれ〜
 コレットちゃん、おでかけ?」

「ううん。
 今、帰ってきたところだよ」

 階段をあがってすぐに話しかけて来たゼロスに、コレットはにっこりと微笑む。

「宿屋のおじさんに、いいお話を聞いたから、お守りを買って来たの。
 フラノール雪うさぎっていってね、良いことがあるんだって」

 『ロイドに渡そうと思って』とコレットが続けようとしたら、ゼロスが先に回った。

「ロイドくんなら、部屋にいるみたいだぜ」

「うん。ありがとう、ゼロス」

 コレットはくるりと体の向きを変え、ロイドの泊っている部屋に向おうとする足を止める。

「あ、そうだ」

 ゼロスに向き直り、コレットは嬉しそうに微笑む。
 それからポケットに手を入れて、1つの紙袋をとりだした。

「ゼロスの分も買って来たんだよ」

「俺様に?」

 コレットが袋を差し出すと、ゼロスはつられて手を伸ばす。
 手の平にのせられた紙袋は小さく、軽い。

 それにしても、不自然だった。
 ロイドに特別な思いを寄せるコレットが、ロイドのためだけにお守りを買ってくるのはわかる。
 が、その『ついで』であろうが、ゼロスの分まで買ってこようとは。

「……もしかして、全員分買ってきたのかな〜?」

 それならば、自分の分があっても納得できる。
 けれど、コレットはきょとんっと瞬いて首を傾げた。

「ううん?
 ロイドとゼロスの分だけだよ」

「ほへ?」

 不思議そうに首を傾げているコレットに、今度はゼロスが瞬いた。
 ロイドはともかく、自分までもがコレットに特別待遇を受ける理由がわからない。

「なぁに、なに〜?
 ひょっとして、コレットちゃん……俺様のこと……愛しちゃってるのかなぁ?」

「うん、ゼロスのことも好きだよ?」

 にこにこと笑いながら、コレットはゼロスに微笑みかける。
 コレットのゼロスに対する『好き』は『Like』。
 特別な意味はない。
 その証拠に、コレットはなんのてらいもなく微笑んでいる。

 なのに何故、ゼロスにだけロイドと同じ物を買って来たのか?

「あのね、このお守りを持っていると、幸せになれるんだって。
 ……だから、ゼロスはだいじょうぶだよ」

「へ?」

「だいじょうぶ、だいじょうぶだよ」

 にっこりと微笑んだまま、コレットは『大丈夫』と繰り返す。
 人より鈍い少女のこと、ゼロスの内心を見透かして云っているわけではないだろうが――――――

ゼロスとコレット。
神子同士って、結構……からませやすいというか、絡ませると萌えるというか……まあ、そんな感じ。
ゼロスにとって、コレットがセレスとは違う意味で妹分でありますように。
いや、むしろ憧れの人って気もしますが。
また……もう少ししっかりとゼロコレは書きたいです。
カップリングではなく、組み合わせで。
ところで、この2人って……『神子んび』と『みこみこ』どっちが正式名称(爆)なんだろう?