『聖女』と呼ばれるものは、特別である。
 その響きだけで、神に愛さる巫女。不可侵にして、絶対の魅力を持つ乙女……などというイメージが付く。およそ世俗の垢に汚れず、へたをすれば食事すらもするわけがない、と思い込んでいる輩もいるかもしれない。

 ――――――少々言い過ぎな気がしないでもないが、それぐらい『聖女』というモノには……特別な思い入れが付きまとう。






「これで回目ですっ!
 いい加減に観念してください」

 『聖女』と呼ばれる少女が、可愛らしい柳眉を寄せる。
 むぅっと頬を膨らませて、こちらを睨んでくるさまは……年よりも幼く感じるが。それでも『どこにでもいる村娘』といった感じだった。

「もうルヴァイドさんだけですよ?」

 腰に手を当ててにじり寄ってくる『聖女』に、黒い死の風と謳われた男は情けなくも迫力で負けた。
 それから『自分だけ』という言葉に、眉を寄せる。

「……イオスもか?」

 ハリネズミのようにツンツンと尖ったイオス。
 あのイオスまでもが『聖女』の要求に素直に従ったのか。

「はい。イオスさんも、ちゃんと出してくれました」

 素直に従うイオスを思い出したのか、にっこりと微笑む『聖女』

「しかしだな」

「しかしも、案山子もありません」

「……」

 取りつく島が無いとはこのことだろう。
 にこにこといつもの笑顔を浮かべながら、『聖女』は手を差し出した。

「さあ、パンツも出してください」

「……」

「ルヴァイドさんがパンツを出してくれないと、今日のお洗濯が終わりません」