「なんか……」
ジャスティーンはため息をつきつつ、部屋を見渡した。
叔母の城にあるジャスティーンの部屋はそれなりに―――――いや、かなりの広さを誇っているのだが、今ばかりはさすがに狭く感じられる。
「ある意味、異様な光景よね……うん」
見渡した部屋にいたのは、いつもの面子ではない。
正確には、『いつもの面子ばかりではない』
右から順に、豊穣のお芋天使アメル、見習召還師のマグナとトリス、そのお目付け役の兄弟子に、獣耳の幼い少女とその姉、黒い羽の少女と、白い羽の豊かな胸を誇る女性。水の伯爵が喜びそうな奇妙な仮面をつけた男性に、黒い甲冑に身を包んだ男性。彼に付き従っているらしい華奢な金髪青年に、黒い機械兵士に……異様なプレッシャーを放つ青いローブの中年男性と、銀髪の少女等など。
とにかく現在ジャスティーンの部屋には、異様な面子が雁首を揃えていた。
「なにをのん気な……これは忌々しき自体ですわっ!」
バシっとテーブルを叩き立ちあがるブルネットの髪の少女に、ネスティは一瞬だけ眉を寄せ、すぐに金髪の少女に向き直った。
「騒がしい城だな。いつもこんな感じなのか?」
「……そう。
でも、今日は特に興奮しているみたいだから……
あまりダリィには近付かない方が良い」
「そのようだな」っと話を区切り、ネスティは皿に並べられた赤い実に手を伸ばす。
それはリィンバウムでも良く見かけた、どこにでもある野苺に見えるが……
「トリス、マグナ」
「「ん?」」
兄弟子に呼ばれた双子が素直に返事を返す。
うながされて素直に口を開けば――――――――
「「おえっぷっ!」」
2人仲良く放送禁止。
「あの、ジャスティーンさんもいかがですか?
お城の厨房を借りて作ってみたいんですけど……」
にっこりと笑顔で手作りのスイートポテトを差し出すアメルに、ジャスティーンは瞬いた。
それからゆっくりとスイートポテトに手を伸ばす。
「ありがとう、いただくわっ!」
心底嬉しそうに笑うジャスティーンに、アメルもまんざらではないようで、こちらも幸せそうに微笑む。
「ああ……やっぱり『人間が作った』ってわかってるものが食べられるのって幸せよね」
叔母の城ではいつのまにか食事が用意されていて、本当に人間が作ったものかも怪しい。それが怖くて食べた気がしない。確かに味は良いのだが……使用人1人見かけない城で、ひとりでに用意されている食事は不気味以外の何者でもないし、今日のように誰かと食事をとるということもない。
ゆえに、多少イレギュラーな出来事であっても、今日のこの状態は歓迎できた。
なにより、会話が成立するというのが素晴らしい。
「いただきま〜っす」
っと勢い良く口に運ぶ。次の瞬間――――――
「甘っ!」
孤児として育ったジャスティーンには、1度口にいれた食べ物を吐き出すことは出来なかった。
少々濃厚な――――ハチミツの味に、プチプチとした知らない食感。それに耐え、なんとか『豊穣の天使特製どろり濃厚☆不思議食感ハチミツスイートポテト』を飲みこんで―――――
「ん、ジャスおねーちゃん、残す良くない。全部食べる」
白いふさふさのしっぽでタンタンと床を叩く。
獣耳の少女が少しだけ不機嫌そうに、ジャスティーンの手元を見つめていた。
「アルルゥちゃんも、お手伝いしてくれたんですよ」
「ん」
顔を見合わせてにっこりと微笑みをかわす少女二人に、ジャスティーンは少しだけ遠い目をした。
(……甘すぎるのよね、コレ。やっぱり全部食べなきゃダメなのかしら?)
「ん?」
ふと視線に気がつき、ハクオロは振り変える。
じっと泉のように澄んだ瞳で見上げてくるのは、アルルゥよりもずっと幼い銀髪の少女。
「…………」
にこりとも笑わない清らかな瞳に、心の中まで見透かされている気分になり、ハクオロは器に盛られたリンゴを少女に手渡した。
「『はい、アドルさんにもリンゴ』……これでいいのか?」
っと助けを求めるように、側に仕えている侍大将と禍日神ヲイデケーに目を向けるしまつ。
当然、話を振られても困るので――――――侍大将は皇城へ聖上の仕事をとりに、禍日神は人形の手入れを……っとさっさと退出した。
「そもそも、管理人は何が言いたくてこのような無茶苦茶なものを書いているのだ?」
遅々として話の進まないお茶会(?)に、遠い目をしたくなるのを懸命にこらえ、苛立ちを紛らわせるようにルヴァイドは辺境のハチミツ酒を口に運んだ。
「将ヨ、確カ……『きり番ノ扱イヲ少シ変エマス』トイウ告知用ダッタハズ……」
「それがトウサマの望みなら―――――――」
「ゼルフィルドはキミの父上じゃないっ!」
ぴったりと機械兵士に身を寄せる黒い羽の少女に、イオスはツッコミをいれた。(なぜって、今喋らなければ、今回は台詞が無いままで終わりそうだからだ(カメラ目線)
「なしえ様は普段、人様のサイトを巡る時に「はじめにお読みください」は読まないそうですから、
……少しでも、お客様が目を通してくれるように、との配慮だそうです」
っと白翼の皇女。
さすがは常識人オンカミヤムカイの皇女―――――説明的である。
「あ、それで今回はキャラクターがごちゃまぜになっているんですね」
納得、納得……っとリルファーレの冠を頭に頂くエルルゥ。
エルルゥの黒髪に、銀のティアラは良く似合っているのだが―――――いかんせん、世界設定が違いすぎる。
髪の色はあっても、根本的な違和感はぬぐいされなかった。
「――――で、結局管理人は何がいいたいんですの?」
ひょいっとギリヤギナの女性がエルルゥの頭からティアラを持ち上げれば、とたんに可愛らしい少女の歓声が上がる。
繊細な金の髪を滝のように緩やかに流した、純白のドレスをまとった少女が、嬉しそうに女性に―――――正確には女性の胸に飛びこんだ。
「気の強いおなごは大好きじゃっ!」
「ああーっつ、もうっ! ちっともまとまりませんわっ!
これではあと時間かけても、落ちがつきませんっ」
バシバシっと机を叩き続けるダリィに、シャトーがぽつりと。
「ダリィがまとめに入っている。
明日は槍が降るかもしれない……」
「シャトール・レイ! あなたこそ何をのん気に……根暗召還師とお茶など飲んでいるのです? ヴィラーネ叔母様不在の今、少しは城を預かるものとしての自覚を……ジャスティーンっ! そもそも悪いのはあなたですわ。あなたが主人公としての地位をしっかりと管理人に示していれば、このように訳のわからない状態には……って、何を泣いていますの? わかりましたわ。やっと自分は主人公の器ではないと、お認めになったのですね? そうですか、そうですのね? そこまでおっしゃるのでしたら、このダリィ・コーネイル。この乱れに乱れた場を、見事まとめあげて見せますわっ!」
『甘い』『プチプチする』『なにか動いてる』『でも癖になりそう……』と呟きながら涙を流し、それでも『豊穣の天使特製どろり濃厚☆不思議食感ハチミツスイートポテト』を口に運ぶジャスティーン。
――――すでに、ダリィに対してツッコミを入れる元気はなかった。
「……では」
自慢のブルネット髪を調えて、ダリィが咳払いをひとつ。
「いつも『朧・紫月堂』におこしの皆様。
まずは管理人にかわって、お礼を申し上げます。
わたくしは(中略)ダリィ・コーネイルですわ。
それでは、本題にはいります。
これまでキリ番を踏んだ方には『イラストリクエスト権』が与えられていましたわ。
新しいカウンターになってからは残念ながら、未だに消化されていないようですけど。
そこで、リクエストの種類を分けたいと思いますの。
従来通りのイラスト、SS、夢小説のリクエスト……それからこれが今日のポイント。
以外と見つけ難いらしい『隠し部屋への入り口』のありか。
それらの中から選んでいただくことになります。
なかなか実行されないイラストを待つより、お手軽に入り口わかるのもいいかも、とも言っていましたわ。
……あと、リクエストが実行されそうな『狙い方』は…ずばり、SSですわね。
絵描き用のMacに向かう時間は日曜日ぐらいですが、文字打ちようのPCには平日常に向かっていますから。
……このぐらいでよろしいかしら?」
「ダリィちゃん、お疲れ様でした」
「ん、ダリィおねーちゃん、カッコイイ」
エルルゥとアルルゥ姉妹は「はい」っと、それぞれに甘いものをダリィに差し出した。
合掌。