蝶が飛んでいる
少しだけ紫がかった白い蝶
ひらりひらりと
まるで彼を導くかのように
触れることはできない
未来なのか
それとも夢なのか
鏡の中で彼を差し招く
蝶の姿に重ね合わせ
少女の姿が浮かび上がる
「ああ、あの子だ」
男の顔に幸せな微笑
鏡の中で
少女は娘に変わる
紫がかった銀色の髪
振り向かない後姿
一瞬の暗転
むしられた白い羽根
白い雪に点々と飛び散る
・・・赤い雫
見なければ良かった
未来など
知らなければ良かった
大切な存在など
男は胸を掻き抱き
空を仰いだ
どこよりも高いこの場所で
それでも空は果てしなく高い
風が男の頬をなぶり
男が気付くよりも早く
頬の雫を奪い去る
そして、男の呟きを
「・・・」
鏡はもう何も語らない
未来なのか 夢なのか
一つだけわかることがある
立ち止まることはできない
それが彼女の望みでもあるならば
来る日の為に
それでも今だけは
今この一時だけは
しばし祈ろう
・・・白き魔女のために