「ねえ、ミッシェルさん。教えてほしいことがあるんだけど。」
「何ですか?」
「あのさあ、『修羅場』って何?」
「『修羅場』・・ですか?芝居などで、戦闘や騒乱の場面を指す言葉ですが。」
「じゃあ『締め切り前で修羅場なの』ってどういう状況なんだろう?」
「おい、フォルト。どこでそんな言葉聞いてきたんだ?」
「え?あのいつもお世話になってる朧・紫月堂さんでだけど?」
「・・・フォルト。それは違うぞ。」
「何が違うのさ?ミッシェルさんが間違っているって事?」
「いや、ラップの言うことは正しい。ただしそれは、世間一般において、だ。」
「????」
「『同人』という限られた世界においては、それは『原稿の締め切りが直前なのに、未だに原稿があがっていなくて、今おおわらわなんだよ〜ん』という意味だ。」
「『同人』って?」
「同士、同好の士とか仲間とかいう意味ですよ。」
「それも世間一般において意味だがな。」
「じゃあ、世間一般でないのはどういう意味なの?」
「いいか、フォルト。世間は広いんだ。俺達が知らないほうが良いこともあるってことだ。」
「そんな風に言われると気になるなあ。」
「・・・知りたいですか?フォルトくん。」
「え?なになに?」
「だぁー、おい、ラップ。そんなことをいたいけな少年に教えるんじゃない。」
「あのですね、世間には乙女と言う種類の人達がいますが、彼女達は日々妄想を膨らましているのですよ。」
「妄想ってどんなこと?」
「そうですね。たとえば『トーマスとアイーダがいい仲になれば良いな』とか。」
「でも、それくらいなら僕やウーナだって思うよ。お似合いだと思うし。」
「そうですね。それくらいで済めばいいのですがね。」
「?」
「話によると私とトーマスの仲に妄想を抱いている方もいるようです。」
「だって、ミッシェルさんもトーマスも男じゃない?」
「だから、『禁断の・・・』なんですよ。」
「やめろー、ラップ!」
「おや、そんなに私が嫌いですか?つれないですね。」
「そう言う問題じゃない!」
「何ムキになってるの、トーマス。ミッシェルさん冗談を言っているに決まってるじゃないか。変なの。」

それをみてささやく乙女がここに数名。
「ねえねえ、ウーナ。やっぱりあの二人怪しいと思わない?」
「わたしも、やっぱりフォルちゃんよりもトーマスとミッシェルさんのほうが読者の受けがいいと思うの。」
「じゃあ決まりね。絵はお姉さんにまかしておきなさい。」
「あ、レイチェル絵を描いてくれるんだ。やったね。あたし文章描く〜。」
「私はパルマンを描いてもよろしいでしょうか?」
「えー、アリアさんも描いてくれるの?」
「アリアさんは何を描いてくれるんですか?」
「そうですね、『これがパルマンの私生活だ!』なんてどうでしょう?」
「あーそれいい!でも買ってくれるのってヌメロスの兵士と某海賊がほとんどだったりして。」
「レイチェルさん、王子を書く予定はないのですか?ビジュアル的に受けると思うのですが。」
「んー、あの人ネタにするようなことないからねえ。『観察日記』でもつけてみようか。」
「ねえ、ルティスさんとかシャノンさんにメールして、いっそのこと合同誌にしたらいいと思うの。」
「ウーナ冴えてる〜。あたしメール書く〜。」
「『アヴィン100の秘密』とか『徹底追求アヴィンとマイル』とか」
「シャノンさんだったら『マイル追っかけ24時間』なんか書いてくれるかも。」
「きゃ〜」

後日、一冊の本を手にニヤニヤとしている魔術師がいた。
その本の裏表紙には「発行:英伝の乙女(エデンのオトメ)」。
一体どこから手に入れたのか。恐るべし、ミッシェル・ド・ラップ・ヘブン。