「アイーダ、ジャンと残って二人を頼む。」
マックさんの頼みに「任せといて!」と答えた。でも・・・本当はあたしもみんなと一緒に戦いたい。
ううん、判ってるの、あたしじゃ力不足だってことは。
これは最後の戦い。この世界が残るかどうか、それはフォルトやウーナ、マックさんの肩にかかっている。そしてその助っ人をするにはあたしじゃ駄目。だから、お願い、トーマス。あたしの分も彼らを助けてあげて。あたしはあたしにできることをする。パルマンさんとアリアさんをここで守っているわ。世界を救う声を。
「まかせとけ。」そう言っていつもの通り不敵に笑うと、ビオラリュームへの道を進んでいった。その背中をあたしはじっと見守るだけ。ただ祈る。お願い、無事に戻って来て。
轟音と共にビオラリュームが沈んで行く。明るくなった空の中、まるで私たちの罪が海に沈んでいくよう。その半分をあの地に残したまま。
結局残ったのは「世界は救われた」ただそれだけの結末。私たちの他には誰も知らない。ディオール王子の企みとその後の苦悩も、フォルトやウーナの頑張りも、ガガーブを越えてやってきた助っ人達の存在も。「残ったのはとりあえずの結果だけ。」
ううん、そんなことない。きっと世界中の人たちが判ってる。誰がしたかは知らなくたって、誰かの頑張りがこの世界を救ったんだって。
そうよ。あたしが知ってるもの、みんながどんなに頑張ったか。たとえ誰も誉めてくれなくたって、あたしがみんなを誉めてあげる。「よくやった、よく頑張った」って。そう、そしてあたし自身にも。
あたしは神様の存在なんて信じていないけど、でもやっぱりいるのかも。だって、あたしたちはみんなご褒美をもらったんだもの。
パルマンさんはアリアさんを。ウーナはフォルトを。そしてあたしは・・・。
「よく頑張ったな、アイーダも。」
彼はそう言って子供にするように頭を撫でてくれた。んもうっ、あたしは子供じゃないのに。
「俺から見れば子供だな。」
ひっどーい。なによ、そんなこと言うんだったらあたしだって言ってやるんだから。お・じ・さ・ん。
「ううっ、傷つくなぁ。」
だって34才はおじさんだよー。あたしの倍以上じゃない。
「倍・・・なんかショックだなぁ。」
(そんなふうにしょげているとそうは見えないけどね。見かけも中身も十分若いよ。・・・でもね、言ってあげない。)
「・・・34才の男は嫌かい?」
・・・嫌な訳ないでしょ。
あたしの祈りをかなえてくれたのは神様?ううん、なんだっていい。
あたしにご褒美をありがとう。