世界の震えに、女王は気がついた。

 微かな気配。
 微かな異変。
 それを感じとれたのは、姉妹の絆だろうか。
 おそらくは、あの占星術師ですらも気づいてはいない。

 微かに香る白い花の芳香に、女王は夜空を見上げた。

 天上に浮かぶは琥珀色の月。
 故郷の空とは違う。
 色をもった天満星。

 世界を震わせた少女は今、おそらく同じ月を見つめている。
 目を奪われている、と言った方が正しいのかもしれない。
 自分も最初はそうだった。
 故郷の空とは違う、色をもった世界に心奪われた。
 闇色の月に怯える民を忘れ、色鮮やかな世界に。

 頭上に輝く月に、女王は静かに指を組む。
 彼女の為に泣くことは許されないが、せめて祈ることだけは許してほしい。

 どうか、そのまま自分達の故郷へ帰るように。
 予見のままに、この世界を旅しませんように。
 自分の前に、彼女が立ちはばからないように。

 女王は一人、祈りを捧げた。