『白き魔女』と呼ばれる娘には、一度だけあった事がある。
その名の通り、夜空に輝く白き月のような銀髪と、静かな湖面を思わせる澄んだ瞳を持つ娘。
敬愛する女王と並び立つに相応しい容貌、資質、魂を持つ乙女。
女王が唯ひとり……愛情を寄せる、もう一人の『女王』。
皮肉なものだ――――――と占星術師は静かに目を閉じる。
等しく女王たる資質を秘めて生まれた二人の女児。
星の並びの微々たる違いから、彼が仕える娘は女王に選ばれ、魔女と呼ばれる娘は国を追われた。
そして現在、女王と占星術師のだした結論に異をとなえ、魔女は彼に命を狙われながら巡礼の旅を続けている。
魔女を想い、女王が苦しんでいると知りながら。
女王を想い、自身を窮地に陥れながら。
もしも、星の並びが違っていたら。
先代占星術師の出した結論が、魔女を選んでいたのならば――――――
自分が仕えていたのは、魔女の方かもしれない。
自分が命を狙っていたのは、女王の方かもしれない。
皮肉なものだ――――――と占星術師は静かにこぼす。