「普通……こういった場合は『頑張ってね』とかいって、ソコを僕に明け渡すものじゃないかな。アメル?」

 ともすれば引きつりそうになる笑顔を誤魔化して、ロッカはアメルがくっついているもの――――の腕を指差した。

「うふふ……ロッカったら。 ―――――――――甘えないで」

 天使の微笑みを浮かべて、妹とも呼べる幼馴染は毒を吐く。
 『聖女』などという大層な名をいただく少女の言葉に、は頭を抱えたくなった。
 内心では『こんなのアメルじゃない〜』とでも叫んでいるのだろう。
 端からその様子を目の当たりにするハメになった仲間たちには、彼女の目がきょろきょろと泳いでいるのが見て取れた。

 そう、助けを求めるようにさまよう視線を。

 と目が合ったフォルテが慌てて目を反らし、シャムロックを見る。そしてシャムロックもまた目を反らし、カザミネを見て、カザミネもまた……(以下略)

「だいたい、いくらこの夢小説が逆ハーレムだからって……あたしが後押しするなんて、甘えたこと思わないでね?」

 『ニコニコ』といった効果音が似合いそうな、遠目には本当に愛らしい微笑みでつむがれるアメルの言葉。
 対するロッカも慣れたもので……完璧に調った『さわやかな笑顔』を顔面に張りつけていた。

「僕がさんと結婚すれば、ED後も家族として、一緒にいられるんだよ?」

 これがメルギトスや鬼・屍人の軍勢による異界からの侵略の脅威を置いての(置くな)、独り者男性人の目下の懸念事項である。
 メルギトス打倒のため、今は行動をともにしているが……それが終われば、みなバラバラの道を歩み出すことになるだろう。
 となれば。
 マグナの護衛獣たるが、マグナにくっついてデグレアに帰るのは必然。
 あんな情況になっているのだから、聖王国に残るという選択肢もなくはないのかもしれないが、マグナと行動を共にするのは確かだろう。

 聖王国に残るにしろ、デグレアに帰るにしろ、今のように側にはいられない。

「でも、1人占めできたら……もっと素敵よね?」

 それは男性陣の誰もがやりたくて、やれないこと。
 いつのまにかできあがった暗黙のルールというか、掟というか……いや、すでに血判状まで作られた気がしないでもないが。

独占禁止法』

 ふたりっきりで出かければ、首にタコを巻きつけてファナン〜ゼラム往復トライアスロン。
 手を繋いだ日には、マサカリヒゲペンギン(※結婚おめでとうございます(嫌な祝い方だな))と名古屋港水族館でリンボーダンス。
 あまつっ! 事故だろうがなんだろうが……唇・頬・手問わず、キスなどしようものなら最高刑。裸にひん剥かれて市中引き回しの後、耳を残した身体全てに念仏を書かれたうえに、わざわざ雪のデグレア本国まで護送(?)されるという……

 とにかく、謎の法令ではあるが、確かにアレには……女性陣は含まれていない。
 完全に盲点だったともいえる。

「………女の子同士で?」

 触覚青年が至極最もなツッコミをいれたらば。

「あら、あたしは天使。人間の性別なんて関係ありません」

 っと聖女はにっこりと微笑んだ。

 『問題あるだろ、色々と』っと叫びたい男性陣は多々(むしろ、全員)いるが、誰もそれを声には出せない。
 それだけ2人が、いや……この場合はアメルが怖かった。

 チクチクと助けを求めるの視線は確かに痛かったが……
 それでも男性陣は、聞こえないフリを決めこんだ。





 あの2人が大切なに危害を加えることは、けっしてないのだから。







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 後書きの類似品。

 ご主人様出番なし(笑)
 私にしては珍しい……完全壊れ風味。
 ロッカって、キャラを壊すと出番が増えるんですが(苦笑) いわゆる黒ロッカ。でも、あまりキャラの性格壊すのは好きじゃないので……連載の方のロッカは白いかと思われます(笑)
 たまにこんな形で壊すのはいいかなぁ? なんて(苦笑) ダメですか?
 ダメだって言われると……ロッカの出番はへるんだろうな(笑) ミニ劇場でさえも。

 ミニ劇場としてはドラマCDの前に書いてたんですけど……ドラマCDでアメルが似たような発言していて、にやけちゃいました(笑) やっぱ、アメルは男でも女でも、関係ないらしい(笑) ネスも男も女も関係なくマグナ(orトリス)が大事みたいですし(苦笑)

(2004.08.01UP)