自分の身に何がおこったのか。
 一瞬遅れて理解する。
 そして、頭が理解したとたん――――――は赤面した。

「ル、ルヴァイドさんっ!」

 慌てて手を寄せようと試みるが、意外にしっかりと捕まっているようで、離せない。

「どうした?」

 目を伏せてはいるが、が赤面しているのは計算の内、といったところだろう。
 注意してその声を聞けば、かすかに震えを帯びている。
 笑いを堪えているのだ。

「日本人に、親愛の意味を込めてキスする習慣はないです、ってこの前言いましたよね?」

「確かに聞いたな」

「だったら……離してください〜」

 情けない声をだして。懸命に手をひっぱる。
 しかし、手はしっかりと捕まったままだった。
 の力では、当然のようにルヴァイドを振りほどけない。

「アレは頬の話ではなかったのか?」

 片目だけを開き、を見る。
 にやりっと唇が笑っているように見えるのは、気のせいだと思いたい。

「頬でも、手でも、同じですっ! 元々そういう習慣がないんです〜」

「そうか」

 短く答えてから、の手を解放―――――する前にもう一度、口付けた。
 それからゆっくりとルヴァイドの少しだけ乾いた唇が離されて、の手も解放される。

「むぅ〜ダメですって言ってるのに」

 ちょっとだけ拗ねたように頬を膨らませ、腰に手を当てて『怒っていますよ』と意思表示。
 きっとルヴァイドを睨んでいるのだが……当然のように迫力は無い。

 本人はわかっていなさそうだが、その仕草は逆に―――――愛らしくもある。

「しかし、キスをしないとなると……おまえの国では、どのように母親は愛情をしめすのだ?」

 まだ少し頬を膨らませているに、小さな子どもにするようにルヴァイドは手を伸ばす。
 そのままいつものように頭に手を置くのかと思ったら、違った。
 膨らませた頬の空気を抜くように、頬をつっつく。

 ――――完全に子供扱いである。

「……抱きしめる、かな?」

 むぅっとむくれたまま、答える

「そうか。では……次からは抱きしめることにしよう」

 『覚えておこう』とばかりに会心の微笑みを見せるルヴァイドに、は慌てて却下の意を伝える。

「し、心臓に悪いから、止めてくださいっ!」

 手の甲にキスされても気恥ずかしいのだ。
 抱きしめられなどしたら……心臓がとまってしまうかもしれない。

 慌てるの仕草が楽しいのだろう。

 ルヴァイドはもう一度、声を殺して笑った。







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 後書きの類似品。

 『うちのルヴァイドはムッツリです』とか『うちのルヴァイドはいじわるです』とか、主張アイコンどっかにないですかね?(ないだろう) あと、『うちのイオスは不器用者です』とか。
 なんとなく、ルヴァイドという『年上男性』にはヒロインで遊んで欲しいです(おい) それゆえに『いじわるっ!』なんです。個人的に上目づかいに可愛い少女に「いじわるっ!」って言われたいです(待て)
たぶん、に「いじわるっ!」はこれが原点(笑) 今のところルヴァイドにしか言ってませんが…いや、むしろこの台詞はルヴァイド専用の武器ってことで(…武器?)

(2004.05.06.UP)