31・火傷




 血が滲む熱をもった火傷を、はできる限り優しくなぞる。

 ただし、の舌を使って。

、どうせなら薬を――――――」

 微かに眉を寄せ、抗議の声をあげるクラトスに、も負けじと眉を寄せた。

「舐めておけば治るって、クラトスが言った」

 クラトスを逃がすまいと、腰にしっかりと手を回し、は背中の火傷を舐める。
 『舐めておけば治る』というのは嘘だ。
 この火傷は、そんなに軽いものではない。

「では、法術で――――――」

「嫌、舐めるノ。
 わざと痛くスるノ!」

 のもらした本音に、さすがのクラトスも辟易とした表情を浮かべた。
 が、それもすぐに消える。

「……心配サセた罰でス」

 ぺろりっと舌をうごめかし、最後にはクラトスの背中――――――火傷に口付けた。






(2005.11.13.UP)