クラトス達が育て上げたという少女は、時々突飛な発言をする。
 その多くは場を和ませることを狙った、間の抜けた答えであったりするのだが……さすがに今回は違った。

「クラトスの赤ちゃんが欲シい」

 にこにこと笑いながら、なんの照れもなく――――――いや、微かに頬が赤いか? とにかく、そう宣言すると、はクラトスの腰のベルトに手をかけた。







「…………ちょっと待て、待ちなさい」

 たっぷりと思考が停止すること数分。
 ベルトを外すことに手間取っていたが、クラトスのズボンのチャックに手をかけた所で、クラトスはようやく制止の声をあげた。

「大丈夫。
 もうすぐ100歳行くって言っても、勃つモノは勃つんだから……赤ちゃんだって、できるよ。
 ――――――たぶん」

 は指を一本立てて笑う。
 微かに赤かった頬が、今ははっきりと赤い。
 自分の発言の持つ意味を、十二分に理解しているようだった。

「勃つ、勃たないはともかく……」

 に押し倒され、あまつさえベルトに手をかけられた状態から主導権を取り戻すべく、クラトスは咳払いをひとつ。それから身体を起こし、ズボンのチャックを下ろそうとするの手を捕まえた。

「……まず、何故そういう結論に至ったのかを、説明しなさい。
 いきなり子供が欲しいなどと……」

「だって、あたシは死ヌ生き物だもノ」

 手を掴まれながらも、クラトスに跨ったままの姿勢では答える。

「母様たちは、あたシのこと大好きだから、あたシが死んだら悲シむでシょう?
 ただノ人間ノあたシは、どう考えたって母様たちと同ジ時間は生きられナいシ。
 だから、あたシの子供がいたら、少シは悲シくナいと思うノ。
 あたシは居ナくナっても、あたシの血は父様たちノ側ニいれるよ
 ……だから、ネ?」

 クラトスの鼻の頭にキスをして、は微笑む。

「クラトスの赤ちゃん産ませて?」





(2005.11.13UP)