嫌いではない。
 むしろ好きだ。
 ただ、恐ろしいだけで。
 ただ、触れられないだけで。





「……ガイ?」

 かわいらしく小首を傾げ、は幼馴染みを『見下ろす』。
 『見下ろされた』青年は、情けなくも腰を抜かしていた。

「頼むから、俺に近づくな〜っ!」

 腰を抜かしながらもなんとかから距離を取ろうと、ガイは手足を器用に動かして逃げ出そうとする。
 それを見逃す程、は優しくない。
 ガイの動きに合わせて自分も体を動かす。
 後ろに下がろうと逃げるガイの手に先回りをし、自分の手を置く。
 ……というより女性全般に触れることのできないガイは、これで手の動きを封じられた。
 次に地を蹴り後ろに下がろうとするガイの足を、は自分の太腿ではさんで動きを封じた。

「ちょっと二人とも〜
 イオン様の目の前で、教育上よくないことはしないで下さいよ〜」

 イオンの目を両手で隠しながら、アニスが講議の声をあげる。
 目隠しをされているイオンは、状況がわかっていないのか、首を傾げていた。

「――――――っていうか、そう思ってるんなら助けろっ!」

 に組み敷かれ、女性恐怖症のため振払って逃げることもできないガイは、周りに助けを求める。
 が、仲間達もそうそう甘くはない。

「嫌ですよ。
 夫婦喧嘩は犬も食わないっていうじゃないですか〜」

「夫婦じゃないっ!」

 しれっと答えるアニスに、ガイは怒鳴り返す。
 動きを封じられ……自由な状態であっても、女性に暴力を振るわないガイが怒っても、アニスが恐れる必要はない。

「ガイ、前から思っていたけど……
 あたしのこと、嫌いなの?」

 上から聞こえる悲し気なの声に、ガイは視線を戻した。
 きららかに揺れる少女の瞳に――――――