「……?」

 失礼だな、と思いながらも『ソレ』が気になり、目が離せない。
 けれど、じっと見つめているわけにもいかない。
 『ソレ』はの――――――女性の胸元なのだから。

「なにを、しているんですか?」

 できるだけ平静を装って、イオンは口を開く。
 聞かれたは不思議そうに瞬いて、イオンを見つめた。

「何って、何が?」

 きょとんっと瞬き、首をかしげる。
 としては、別段おかしな行動を取っていつ自覚はないらしい。
 それでは『ソレ』を疑問に思う自分がおかしいのだろうか?
 イオンはそう考えて、仲間の中で一番……比較的常識人と呼べるジェイドに視線を移した。
 ジェイドも『ソレ』に対して疑問を持っていたのだろう、イオンの視線を受けて口を開く。

「……

「はい?」

 問いかける相手が変わったことを気にすることもなく、はジェイドに向き直り――――――胸が揺れた。
 の胸は、メロンと謳われるティアには及ばないが、ナタリアよりは大きい。
 とはいえ、常であれば振り返るぐらいで揺れはしない。

「胸元に……何を入れているんですか?」

「……何って、見ますか?」

 あっけらかんっととんでもないことを宣わり、は胸元を開く。
 ひとつ、またひとつとボタンが外され、あらわになるの白い肌。
 そのあまりの白さに、視線を反らしたイオンの視界の端に、青いものが見えた。

 ボタンを外され、ふわりとこぼれでる白と青の毛におおわれた長い耳。

 『ソレ』が何か思いいたり、イオンが視線を戻すのと、『ソレ』が顔を出すのは同時だった。

「さ、寒いですの〜!」

 が胸元をはだけさせたために、外気にふれたミュウが震えて身を丸くする。
 胸元深く逃げこもうと、もぞもぞと行動を開始したミュウの動きに合わせ、の白い胸がイオンとジェイドの目の前で揺れた。

「これはまた……」

 なんと艶かしい眺めであろうか。

 穢れを知らぬ乙女の白い双丘が、胸元に侵入した小動物によって艶かしく動く。
 そんな様を眼前で見せられて、食指が働かぬ男はいない。

「ミュウったら、くすぐったいから、じっとしてて」

 ほんのりと頬を染め、楽しそうには笑う。
 にしてみれば、ミュウの仕草が可愛くてしかたがないらしい。
 はたでその様を見せられる男性陣に、自分の姿――――――胸がどのように見られているか、気にならぬほどに。

「……あの、

 揺れる双丘に引き付けられる視線を無理矢理に移し、イオンは眉を寄せる。
 云うべきか、云わざるベきか。
 はおそらく知らない。
 だからこそ、無邪気にミュウを胸元にしのばせていたのだろう。

「ミュウは可愛く見えても……」

「雄ですよ」

 云いにくそうに言葉を濁すイオンに、ジェイドが続く。
 ジェイドとしても、お気に入りのの胸にミュウがいるのが面白くないらしい。
 きっぱりと言い放つと、の反応をまった。

「雄っていっても、こんなに可愛いんだし……」

「可愛くてもミュウは雄です。
 貴女は男を胸の谷間に挟んでいるんです」

「男って云っても……まだ子供だし……」

 可愛いミュウを手放すまいと、はジェイドに抵抗する。
 今にもミュウをから離さんと構える、ジェイドの手から守るように胸元を隠した。
 その手の下で、ミュウの『さんは、柔らかくて温かいですの〜』という声が聞こえる。
 気のせいでなければ、ジェイドとイオンの頬が引きつった。

「可愛くて子供なら良いのですか?
 では、貴女は――――――イオン様を胸の谷間にはさめますか?」









 そうジェイドに問われ、ようやくはミュウを胸元からとりだした。