「ねえ、おじさん。この『きかいへいし』どうしてねむったままなの?」

 黒い瞳に見上げられ、男は逡巡する。
 『大人』である自分達には見つかられないものを、『子供』である目の前の少年なら、あるいは見つけ出せるのではないか……と。

「この機械兵士を起動させるためには、パスワードが必要なんだ」

「ぱすわーど?」

 きょとんっと瞬き、首をかしげる。
 どうやら、そこから教えなければならないらしい。

「パスワードというのはだな……まあ、いい。おまえに聞いても無駄だろう」

 我ながら、情けなくも行き詰まっているらしい。
 小さな少年のひらめきに期待しようなどと。

 あちこちはねた少年の髪を撫でる。
 頭を撫でられて少年は気持ち良さそうに目を細めると、視線を黒い機械兵士に移した。

 気が遠くなるほどの時間を、朽ちた遺跡で眠り続ける機械兵士。
 遺跡の機能自体は生きている。
 それゆえに『彼』も絶対に『生きて』いるはずだ。

 戦うために作られた、眠り続ける漆黒の戦士。

「なあ、マグナ。『平和の証を示せ』とは、どういうことだろうな……」

 髪を撫でながら呟く。
 返事は期待していない。

「それが、『ぱすわーど』なの?」

「ねえ、おじさん?」っと首をかしげて、マグナがレディウスを見上げる。

 この『きかいへいし』、ホントは、せんそうなんかしたくないんだよ。

「だから、『ぱすわーど』をナゾナゾにしたんだ」