「なんだ、まだ気にしていたのか」

ちょこんと同じソファーの端に座る妖狐の少女を見る。
しょんぼりと本来の耳を下げた少女は、珍しく主である少年から離れていた。

「ハサハちゃん、別に怒られたわけじゃないでしょう?」

食後のお茶をおぼんにのせたが、ルヴァイドとハサハの隣に腰を下ろす。
そのままおぼんをテーブルの上におき、ハサハの頭を抱き寄せた。

「ハサハちゃん?」

優しく頭を撫でるの背中に、ハサハの小さな腕が回された。
唇を引き結び、ぎゅうっとの胸に顔を埋め、ハサハは顔を隠してしまった。

「……そう気にすることはない」

の胸に隠れたハサハの髪を、今度はルヴァイドが梳いた。
そして、顔をあげる。




「ハサハ、落ちこんでたよなぁ」

「ちゃんと慰めてあげなきゃダメですよ?」

「わかってるよ」

仲間達のシーツを集め、洗濯に向かうアメルを手伝いながら、マグナは居間の3人に目を向ける。
落ちこんでいるハサハを、が慰めているのが見えた。
の後ろから覗きこむようにハサハの髪を梳くルヴァイド。
なんだか親子みたいだ、と奇妙な気分になりながらマグナは苦笑を浮かべる。

――――と、顔をあげたルヴァイドと目が合った。

にやりっと笑うルヴァイド。
幼い頃より兄と慕い、仲は良くなかったが養父との交流もあったルヴァイド。
彼ならば、今のハサハを元気付ける『最高の事実』を知っているはずだ。
それはマグナにとっては『最悪の事実』ではあるが。

マグナは慌ててシーツをアメルに押し付け、階段を駆け下りた。




ハサハの髪を梳きながら、ルヴァイドがマグナの危惧した言葉をつむぐ。

「……マグナなど、10をすぎても」

「だぁ〜〜〜っ!」

大声で話しに割り込んできたマグナに、は目を丸くして驚き、ハサハは怯えてますます強くの胸に顔を埋めた。
ただ1人、マグナの襲来を察知していたルヴァイドは余裕たっぷりに微笑む。

「……どうしたんですか?」

怯えているハサハの頭を撫でながら、が瞬く。

いつものんびりと笑っているマグナ。
そのマグナの、今のように慌てた顔など―――――あまり見たことが無かった。
それから、どうやら原因となったらしいルヴァイドを見上げる。

「ん? マグナはな、10をすぎても……」

「あ〜っ! あああぁ〜〜〜っ!」

奇妙な悲鳴を上げながら、必死でルヴァイドの言葉をさえぎろうとするマグナ。
死刑宣告は以外なところから発せられた。

「12歳までおねしょをしていた、って話しですか?」

以外なの言葉に、ルヴァイドは目を細めた。
まさかマグナが自分からそんな話しをするとは思えない。
それでは誰が―――――――っと考えて、容疑者は1人しか浮かばない。

「デグレアにいた頃レイムさんに――――――――――――――――





『育児日記』を見せられたんです」っと語るの目は、どこか遠くを眺めていた。







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 後書きの類似品。

 妙に好評だった『育児日記』。
 これ以降……このサイト内のレイムさん=親馬鹿ってことになった気がします。
 なんだか……すごい過保護なイメージがしますが(苦笑)教育方針はスパルタだったはずです。……たぶん。
 むしろ、過保護はキュラーかな?(笑)
 またそのうち……レディウスを交えたマグナ(小)争奪戦とか書きたいです。

(2004.08.01UP)