(……寝てる)

 少ない休憩時間を利用して、あまり人目につかない森の中を散策する。
 1人きりになれるその時間だけが『聖女』ではない、本当の『アメル』に戻れる、とても大事な時間。
 『聖女』という噂が広がり、村に奇跡をたよって人が集まるようになってからは、家族に会うことすらままならない。
 そんな寂しさをまぎらわせるために、休憩時間は幼い頃遊びまわった森に足を踏み入れるのだが……

 今日は先客がいた。

(気持ち良さそう……)

 自分とそう歳のかわらない少年と、見なれない服装の少女(―――こちらは、頭のてっぺんから白い耳が生えている)が、仲良く気持ち良さそうに眠っていた。

(この人も、『聖女の奇跡』を頼ってきたのかな?)

 じっと寝顔を見つめる。

 以外とまつげが長い。
 目を閉じて無防備に寝顔を晒しているから、幼くもみえるが……結構調った顔立ちをしている。
 紫がかった黒髪に、瞳はどんな色をしているのか。

 興味をひかれて、アメルは少年の頬に指の伸ばした。

「…あの、もしもし?」

 ぷにぷにっと頬を突つく。

「う〜ん……」

 眠りの中、緩慢な動きで少年の手が振るわれる。
 眉根をよせる表情の変化が楽しい。

 くすくすっと笑いながら、アメルは再び頬を突つく。

「こんな所で寝ていると、風邪をひいちゃいますよ?」

「ん〜、も……少し……」

 少年がアメルの指から逃れるように寝返りをつ。

 男の子というものは、みんなこうなのだろうか。

 幼馴染の双子。
 その弟の方も、昔は起こすのに苦労した気がする。

(あの頃は毎日暗くなるまで遊んでいたから、起きられなかったってのもあるかも……)

 懐かしいなぁ……などと、見ず知らずの少年の頬を突つきつつ、首をひねる。
 『懐かしい』といえば、目の前の少年。

 始めて逢うはずなのに、どこか懐かしい。

 そんなはずはないのだが。
 はて? っと首を傾げていると、頭上から猫の鳴き声が聞こえた――――――







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 後書きの類似品。

 何を隠そう、私はアメル好きです(笑)
 腹黒くても白くても、アメルが好きです(苦笑)
 でも、まだアメルの出番は先だなぁ…といった時期に書いた一品。
 長編よりフライング聖女さまです(笑) でも、本日長編にてアメル登場(苦笑)

(2004.05.06.UP)