「……いけませんか?」

 そう可愛らしく小首をかしげた娘に、ラムダは目を細める。
 大の男をも射すくめる眼光を受け、はくすりと笑った。

「わたしは貴方が好き。大好き」

 ふんわりと綺麗に微笑み、祈るように胸の前で手を組む。
 その仕草は、まるでラムダに向けているはずているはずの言葉を、自分に言い聞かせているようだった。

「でも、残念なことにラムダさんはわたしを好きじゃない」

 はぐらかそうが、言葉の裏を読もうが変わらない、絶対の真実。
 はラムダを想っているが、ラムダはを想ってはいない。
 完全なるの片思いだ。

「だからラムダさんが死んだ後、わたしがどうしようが、わたしの勝手です」

 新しい恋を見つけようが、ラムダだけを想っていようが。

「ラムダさんがわたしを愛してて、愛するわたしに一日でも長く生きて欲しい、って可愛い事言うなら叶えてあげない事もないかもしれなくもありませんが」

 違いますよね? と微笑みながらは上目遣いにラムダを見上げる。
 ラムダにとっての自分は、ともに戦う仲間でも恋人でもない。
 レジェンドラ大陸に生きる『その他大勢の守るべき命』でしかなく、そこに人と家畜の区別もない。

 決して特別な『誰か』ではなかった。

「貴方が死んだら、わたしも死にます。
 取るに足らない一人の人間の小娘が勝手に死ぬだけです。
 ラムダさんはなんっにも気にせず、好きに特攻でも自爆でもしてください」