「ホント、ノストラダムスもびっくりよ」

 が眉を寄せて睨み付けると、睨み付けられた当人――――――クラトスは眉一つ動かすことなく首を傾げた。

「のすとらだむす?」

「私の世界の、昔の予言者。
 世紀末に人類滅亡を予言したりしてた人?
 まあ、解釈は色々ある、ってことで……結局人類滅亡してないんだけど」

 ノストラダムスについて詳しいことは知らないが。
 大体の認識はこんなものであっているのだろう。――――――間違っているとしても、それに気づくための知識は残念ながらにはなかったが。

 腰に手をあてて、ほどよく育った胸を張るに、クラトスは呆れて小さく息をはく。

「まったく、何を威張っているのやら……」

「自分の無知さ加減?
 ごめんね、ちゃんと説明できなくて」

 正確な説明のできない自分の知識を恥じることなく、は尚も胸をはる。……というか、ここは虚勢を張り続けるしかない。
 『ノストラダムス』という単語を出したはよいが、クラトスが知っているはずはないのだから。

「それで、その昔の予言者がどうした?」

「へ?
 そこに突っ込み入れてくれるの?」

「先に言い出したのはおまえだろう」

「あ、そうだった」

 ぺろりと舌を出して、は笑う。
 それから眉を寄せたままのクラトスをじっと見つめて手招く。
 普段は用心深いくせに、妙に天然のきらいのあるクラトスは、疑うことなくの招きに応じる。

「クラトスのこと、こんなに好きになるだなんて、思わなかった――――――ってこと」

 手招きに応じたクラトスの肩に手をのせ、言うが早いかはその頬に素早く口付けた。





(2005.11.17UP)

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