「……それは、まじないか何かですか?」

「ん〜、うん。
 『おまじない』かな」

 流れ星に願いを唱えるなどと、恥ずかしい所を見つかってしまった。

 夜空から視線を落し、は少し考える。
 それから他に説明のしようもないし、する必要もないかなと思い至り、横に立つ男を見上げた。

「流れ星が消える前に3つ願いごとを唱えられたら、願いが叶うの」

「貴女の世界の風習か何かですか?」

「風習っていうか……子どもの遊びみたいなものじゃないかな?
 だって、無理でしょ。
 流れ星が消える前に、願いごとを3回も唱えるなんて」

 流れ星を見つけられることは稀である。
 その滅多にない機会に出会えたとしても、 今度は流れ星のスピードが早すぎて、願いごとを唱える時間がないし、願いごとなど咄嗟には浮かばない。
 常に心に留めておくような願いなら、きっと長くなりすぎて3回も唱えられない。

「一説には、星が消える前に3つも願いが唱えられるほど口の周りが早いなら、
 口先三寸で人生やっていけるだろう、って説が……」

「……あるのですか?
 それはまた……」

「身も蓋もないでしょ。
 でも、この説は結構お気に入り。
 それに星に願うなんて、私のキャラじゃないし」

 苦笑を漏らし、は夜空を見上げる。
 夜空に浮かんでいるのは、日本と同じ琥珀色の月。
 いつか世界を被う闇の太陽は、今はまだない。
 あの水底の民の遺産は、まだ地下深く眠っているはずだ。
 その存在は、見守る役目を担った水底の民ですら忘れかけている。

「何を……願っていたのですか?」

『星に願うなど、自分のキャラではない』と言いながら、は今、星に祈りを捧げていた。
 何か想う事があるのだろう。

「説明しづらいな……
 あ、秘密ってことで……いい?
 っていうか、女の子の『お願い』を詮索なんてしないでよ」

「ミッシェルさんのす〜け〜べ〜」と付け足して、は小さく舌をだす。
 誰が見ても明らかな『誤魔化し』を見せるに、ミッシェルは小さくため息をはいた。

「星に願うよりも、確実な方法を知っていますよ」






(05.10.21.UP)

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