「あ、あれ?
 なんか……いつもと違う」

「いつもって……あなたが知っている状態は、臨戦態勢でしょう。
 普段からあのような状態では、歩き難くてしかたありませんよ」

「まあ、確かに?」

 いつも『臨戦態勢』であったら、ズボンの前が張って歩き難いことこのうえない。

「それで、どうすればいいの?」

 好奇心を押さえきれず、『それ』から目を離さないに苦笑を浮かべ、ジェイドはの手をとり、『それ』に添えた。

「できればくわえて欲しいのですが……」

「……えっ、え〜と……」

 頬を赤くそめ、は目を反らす。
 自分から言い出した事とはいえ、さすがに抵抗があるのだろう。

「く、口でしなきゃ……だめ?」

 『それ』に添えられたの、白い指が微かに震える。
 僅かに含まれた怯えと期待。
 明るい光りの下、初めてまじまじと対峙した『それ』に対する好奇心。にはない未知の器官への恐怖心。

「……今回は手だけで構いませんよ。
 これから、『覚えて』くれるのでしょう?」

 だから、今日無理に挑む必要はない。
 本当は意地悪をしてやりたい気もするが。
 の方からこういった誘いをしてくる事は珍しい。
 たまには優しくしておかないと、この可愛い恋人にいつか本当に逃げられてしまう――――――もちろん、逃がす気はなかったが。

「握ってください」

「……はい」

 ジェイドの言葉に素直に従い、は『それ』を握りしめる。

「もっと、力を込めても大丈夫ですよ」

「えっと、……こうですか?」

 きゅうっと僅かに力がこもる。

「……、もっと強く握っても大丈夫です」

「え、でも……痛くないですか?」

 微かに眉をよせ、は不安げにジェイドを見上げる。
 『それ』はジェイドの体の一部であって、の体ではない。
 加減が解らなくても、無理はなかった。

「あなたの『なか』はもっと『きつい』ですよ……おっ?」

 ぎゅっと『それ』を握られて、ジェイドは珍しく声を漏らす。
 見下ろせば、拗ねた目をしたがジェイドを睨んでいた。

「大佐のエッチ。
 ……いじわる」

「今日は虐めているつもりはないんですが……」

 虐めるつもりであれば、初心者であろうとも口での『奉仕』を要求する。今回に限っていうのなら、の方から『教えてください』とジェイドを誘ってきたのだから。それぐらいの要求は、通って当たり前。
 当然の権利と言える。
 が、ジェイドはそれをしない。
 が望むように、初心者にあった行為を教授しようとしていた。

「……少しきつい方が、私は気持ちがいいです。
 そうですね……」

 の髪を好きながら、ジェイドは彼女がイメージしやすそうな物を考える。
 が程よい力加減で握るものと云えば――――――

「……武器の柄を握るぐらいの強さで大丈夫だと思いますよ」

「そ、そんなに力いっぱいいれて、大丈夫なんですか?」

「はい。
 力いっぱいお願いします」

「それじゃあ……」

 ぎゅううっと『それ』に力を込められる。
 『力いっぱい』といいつつ、の握力には遠慮がある。
 が、先ほどまでと比べれば……込められた力には明らかな違いがあった。

「こんなかんじ……ですか?」

「まだ少々足りなくはありますが、そんな感じでお願いします」

 あとは触っている間に慣れてくれば良い。
 が誘っての、今回の行為。
 意地悪をするのは我慢するが……その回数までは遠慮をする気はない。

「あ、なんか……動いた?」

 はジェイドの『それ』を握りしめたまま、小さく悲鳴をあげる。

「少し、大きくなったかも……?」

 興味深気に『それ』を覗きこみ、は握る手に力を込める。

「だんだん……硬く……?」

 自分の手が与える刺激に、『それ』が素直な反応を見せるのが楽しいのだろう。
 ははにかみながらも手を動かす。

「……なんだか、ねんどみたい……?」

 首をかしげる
 その桜色の唇が、新しい提案を持ちかけてくるまでに、そう時間はかからなかった。






(2006.06.06UP)
『ねんどみたい。』というお題から、『これ』しか思い付かなかったんです(笑)