クイーン


(どうすれば…………)
 一人っきりの部屋で、ヴィラーネは迷っていた。
 頼まれた事とはいえ、兄エリオスの魂を未だに現世にとどめている事に。
 指輪の主の座を捨てて、この城を捨てて、出て行った兄。
 その兄が死んだ時、魔術師達が言ってきたのは、エリオスの魂を別の体に移すという物だった。
 その場では、エリオスの魂を封じ込めたヴィラーネだった。でも、この魂を手にとった瞬間に感じたのは、死んだはずのエリオスの温もりだった。
「どんな気持ちで、ここにいるのですか?」
 問い掛けても、その温もりは生前のようには答えを返してはくれない。
 そして、問い掛けてからしばらくして、ヴィラーネは心の中で苦笑いを浮かべた。
「いい気分では……ないですよね」
 本当なら天に召される所を無理やりつなぎとめているのだから、まるで籠の中の鳥のように。
 まるで青い鳥を捕まえたようなものだった。このまま、つなぎ止められたら、どんなに幸せだろう。
 でも、捕らえられた青い鳥は……………………。
「そうね」
 呟いた小さな声。その言葉を呟くと、ヴィラーネの顔からは、迷いは無くなった。

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